ハノイに行ったのは、中国文化の影響が強い地だから。
南のホーチミンより、北のハノイのほうが中国に近く、いつか訪ねてみたいと思っていました。
東洋占術、中でも易経を学ぶ者にとって、ハノイはあこがれの地です。
まず訪れたのが孔子廟(文廟)。ベトナム最古の大学でもあります。
亀が背負っているのは、科挙の合格者の名前。東洋占術では、亀は陰陽五行で水を司る聖獣であり、知恵の消長です。
門の前には池があり、まさに鯉が登ってドラゴンになるイメージです。
易の六十四卦の一つ、「乾為天(けんいてん)」は竜の成長物語ですが、池のほとりに立っている「或躍在淵(あるいはおどりて、ふちにあり)」という爻辞が浮かんできました。四爻で、竜が地を離れて飛び上がったりやめたり、逡巡している状態です。そこを乗り越えて五爻に達すると「飛竜在天」となります。
ポケモンGoをやっている外国人学生から「どうして弱そうな鯉がドラゴンになるんですか」と質問されることがありますが、これこそ東洋思想の源流です。
ハノイは、亀の都。
ハノイのホアンキエム湖には、亀の伝説があります。
15世紀、中国の明の支配を受けていた時代、ベトナムの初代皇帝は湖の宝剣によって明を駆逐しました。のちに湖から神の使いの亀が現れ、宝剣を返すように公邸に告げました。湖の名前のホアンキエムはベトナム語で「剣を返す」という意味だそうです。
そして、ハロン湾は竜が降り立った場所。
中国の侵攻に苦しんでいたベトナムを救うために竜が降り立ち、口から宝玉を放って敵を駆逐しました。その宝玉が奇岩に姿を変えたという伝説があります。
一度だけでなく、再訪したい。こうして旅の目的地が無限に増えていきます。