あしかがフラワーパークで藤の花を楽しんだあと、足利学校へ向かいました。
日本最古の学校であり、戦国時代は易学と兵学を修める最高学府でした。
易を学ぶ者にとってはぜひ訪れたい聖地です。
「五十にして以て易を学ばば、以て大過なかるべし(五十になるころまで易を学べば、大きな過ちをすることもないだろう)」と孔子は言いますが、私の場合は五十を過ぎて延々と学んでも大過だらけのような気がします。
爻辞をただ読めばいいわけじゃなくて、占的に合わせた解釈がむずかしいものです。
以前、横浜中華街の占いの館で占い師をやっていた頃、「易はすぱっと答えが出るからいい」という占い師がいました。かなりの達人かと思ったら、さいころを3つ振って易の本を見て答えていました。その本には六十四卦×六爻すべてに◎〇△×のマークがついているので、吉凶を4段階で告げられるというのです。
それじゃおみくじと一緒じゃないかと思ったものですが、それはそれで当たることもあるのでしょう。
最近読んでいるのがこの本。
六十四卦の解説のあとに占例が紹介されており、大いに参考になります。たとえば「沢水困(たくすいこん)」。
四難卦の一つであり「困」という字からして、いかにも凶という感じです。
試験の成り行きを占って沢水困の三爻が出ました。
爻辞は「石に困(くる)しみ」で始まり「その宮に入りてその妻を見ず、凶なり」で終わります。
こりゃだめだろうと判断するのが一般的ですが、試験を受けた本人はこう言います。
「未婚の私は妻を見る見ないもない。これは配偶者=競争者がいないということで、一位で合格を意味する。『石に困しむ』とは二番目の合格者の姓が石か石偏ということ」
結果はその通り、トップ合格を果たし、二位は石という姓の人でした。
清の時代の大学者が科挙を受けた時のエピソードです。
試験の手ごたえがよかったのでしょうし、これだけの解釈ができる人なら、科挙も余裕で合格できるのでしょう。
この域にはなかなか達することはできませんが、易を学ぶのは本当におもしろい。
孔子は「五十になるまで易を学べば」と言いましたが、五十を過ぎてこその学びにぴったりです。