翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

「物語欲」を満たす

インナーチャイルドカード」を知ったのは、天海玉紀先生を通してです。

タロットカードに似ているようでいて、決定的にちがうのは、カードを見て語るのは占い師ではなく、相談者であることです。

人間には「物語欲」があります。単に生きるのではなく、そこに何らかの物語を作りたいのです。
「物語欲」ということばは、鴻上尚史第三舞台で知りました。
人間の三大欲求は睡眠欲、食欲、性欲といわれますが、人によっては物語欲が三大欲求をしのぐという話です。
断食芸人は、何日断食を続けたかという物語を作るために、食欲より物語欲を優先させて死んでしまいます。架空の話ではなく、現実に拒食症で命を落とす人もいます。

物語欲の強さは個人差があって、物語なんか作らなくても淡々と目の前のやるべきことをやって、堅実な人生を送っている人もたくさんいます。私にはそういう生き方は絶対に無理です。物語欲が強すぎるから。

日本語教師という厄介な仕事を始めたのも、物語欲のせいです。
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20160417/1460851126
玉紀先生のインナーチャイルドカードのセッションを受けて「やるしかない!」と思い立ったものの、実際に教壇に立ってみると失敗の連続で落ち込んで、玉紀先生を逆恨みしたこともありました。
胃が痛むほどのプレッシャーもありますが、この一年、退屈することはありませんでした。物語欲が強い人間は退屈を最も嫌うのです。

玉紀先生がインナーチャイルドカード講座を開催するというので、参加しました。
http://lady-joker.com/20170209-icc/

不自由なく衣食住が満たされたからといって、それだけで満ち足りるのか、というテーマもあるわけです。それぞれにとってのそれぞれの「物語」は、それぞれが生きる上での指針や羅針盤のような意味を持つのではないかと考えます。

まさにそう! 私が常に満たされない思いに駆り立てられていたのは、私の人生の物語がつまらないから。

日本語学校の作文のクラスにも、物語を求める学生がたくさんいます。
一般的な日本語学校の作文は、大学や専門学校の入試をパスするためのテクニックを教えることが多いのでしょうが、私が教えている学校はヨーロッパの日本オタクの学生が大半です。
日本の漫画やアニメにハマってはるばる日本にやって来たのですから、ありきたりの添削指導では満足しません。

初心者は日本語の能力が物語欲に追いつきませんから、テンプレートに従って自己紹介や日記を書くのですが、ある程度まで進むと物語を書くようになります。

スイス人学生のイネスの自己紹介は、こんな書き出しでした。
「私は小さいころ、親に捨てられました」
えええ!と驚愕する私にイネスはこう言いました。
「先生、最後まで読んでください。ハヤオ・ミヤザキの『もののけ姫』にインスパイアされたフィクションですよ」

オランダ人学生のニルスも日本語で物語を書き続けています。
「現実のこと(real things)を書くのはむずかしいです。適切な言葉を選ばないといけませんから。物語だったら、どんな言葉だって選べます」

人は物語によって、言葉を選び、人生の意味を見出すのでしょう。
玉紀先生のインナーチャイルドカード講座は2週連続で、1回目が終わったところ。自分の中で整理して、また新しい物語を探すつもりです。