「フィンランドが好き」というと、ゆるふわな森ガールのイメージですが、私はアキ・カウリスマキの映画でフィンランドにハマりました。
『浮き雲』という映画です。不況で夫婦そろって失業する話。登場人物は野暮ったくて口数が少なく、全体的なトーンは暗いのですが、くすっと笑えるシーンもある映画でした。
フィンランド人とつながりたかったけど、フィンランド人はシャイで外国人となかなか打ち解けません。フィンランドの留学記を読むと、「1年以上過ぎてやっとフィンランド人と言葉を交わすようになった」という記述があり、若い人ならいいだろうけど、50代の私はそんな時間はないとため息をついたものです。
そこで始めたのがカウチサーフィン。日本を旅行するフィンランド人旅行者を自宅に泊めれば、いやでも仲良くなるだろうという下心があったからです。
カウチサーフィンの思わぬ副産物で日本語教師になりました。
ここ数年、フィンランドに恋い焦がれるように生きてきたわけですが、日本を出てフィンランドに住みたいかというと、ちょっとためらってしまいます。
外から見る分にはあこがれの国ですが、実際に暮らすとなると、いろいろと大変そう。
特に病気になったとき。フィンランド人は「病院を予約しても、診察は何日も先になるので、軽い病気なら治ってしまう」と言います。
フィンランド在住の友人のブログを読むと、深刻な病気になったら大変そうです。
絶賛されているフィンランドの教育にしても、「落ちこぼれを出さないという点では機能しているが、優秀な生徒には物足りない」と聞いたことがあります。
教育費が無料といっても、大学入試はかなりの難関です。大学はすべて国立ですから、誰でも入れるFランの私立大学なんてありません。
日本語学校で北欧の学生から「日本は大きな政府ですか、小さな政府ですか」と聞かれたことがあります。社会保障は手厚くないけれど、なんでも自己責任というわけでもありません。「どちらでもない」と答えると、「それはすばらしい、バランスが取れていますね」と学生。うーん、どちらも中途半端でうまく機能していない部分も多いし、少子高齢化が進むと日本自体が立ち行かなくなりそうです。
光あるところ必ず影がある。
フィンランドは遠くにありて思うもの。旅行なら、光の部分だけを見て、楽しく過ごせます。そして日本オタクの外国人学生も、数週間の留学なら、楽しかった思い出だけを胸に帰国していきます。