カウチサーフィンのサイトを通して日本語学校のホストファミリーを依頼された縁で、その学校で教えることになりました。
教え始めるようになってからも、フィンランド人学生のホームステイを受け入れています。東京の家は狭いし、日本人は家に人を泊めたがらない上に相手は外国人。アコモデーション担当者は、ホストファミリー探しにいつも苦労しています。
ホストファミリーには実費として一日2500円の謝礼が支払われます。あれこれおもてなしをしていると赤字になりますが、中には郊外の広い家で3人、4人とまとめてホストして収益を出しているホストファミリーもいるそうです。
外食に連れて行かず、まとめて食事を作ればコストは下がりますし、学生同士で通学方法やSuicaの購入など教え合うので、ホストの手間もかかりません。
ホームステイの学生に「どんな食事をしているの?」と聞くと、だいたいカレー、うどん、焼きそば、お好み焼き、ギョウザなど。寿司や天ぷらはめったに聞きません。なるほど、お手軽料理をローテーションすればメニューに頭を悩ませることもありません。
宿泊者の身元がしっかりしているし、最短でも2週間の長期滞在ですから、Airbnbから乗り換えるホストもいるそうです。
ライター仕事が途絶えたら、郊外の部屋数が多く家賃の安い家を借りて、寮母として日銭を稼ぐのもいいかもしれないと夢想しています。「センスのある損」をするつもりが、ちゃっかり小銭稼ぎにシフトしたりして。
先日、学校に行くと、アコモデーション担当者から相談を持ちかけられました。もともとホストファミリーが不足しているところに、お盆の時期。急な申し込みがあって、受け入れ先が見つからない学生がいるとのこと。
「フィンランド人じゃないんですけど、もし、できたら…」と申し訳なさそうに打診されました。
ホストファミリーを求めていたのは、オランダ人の学生でした。
即座に頭に浮かんだのがこの本。
- 作者: ミープヒース,アリスン・レスリーゴールド,Miep Gies,Alison Leslie Gold,深町真理子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1994/04
- メディア: 文庫
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著者のミープ・ヒースはアムステルダムの隠れ家で暮らしたアンネ達を支えました。
ミープはオランダ人ではなく、ウィーン生まれのオーストリア人です。もともと丈夫な子供ではなかった上に、第一次大戦後の深刻な食料不足で栄養失調になり、「このままでは命が危ない」と、食料事情のいいオランダに養女に出されました。里親はすでに5人の子持ちで生活は豊かではなかったのに、ミープが健康になるように懸命に育てました。
すくすくと成長したミープはオーストリアに帰ることなく、アムステルダムで就職したのがアンネ・フランクの父親が経営する食品会社です。
戦時中で食料が乏しくなり、自分たちが生きていくのも大変なのに隠れ家の二家族を食べさせるのは大変な苦労だったことでしょう。しかも、途中から歯科医のデュッセルさんまで隠れ家生活に加わります。
6年前、私はこんな文を書きました。この時はカウチサーフィンを始めていませんでした。
ゲシュタポによる連行後、戻ってきたのは父親のオットー・フランクだけでした。ミープがナチの目をかわして保管していたアンネの日記は、世界中の人に読み続けられることになりました。
アンネ・フランクのように、後世に残るような文章を書くことは、私には無理でしょう。そして、ミープ・ヒースのような崇高な献身もできません。
せめて、ミープがユダヤ人をかくまっていることを薄々気づいて、何も言わずにジャガイモを多めに袋に入れる八百屋さんぐらいの行為はできないものかと思っています。
もちろん、戦時中の緊迫した事情と現代ではとても比較にはなりません。
それでも、さまざまなことがつながって、人生には思いもよらない展開が待ち受けているものだと実感しました。
オランダといえばチューリップ。「本当のチューリップを持ってきたかったんだけど…」と クラウス君は木製のチューリップの花束を差し出しました。