タイトルに惹かれて読みました。
- 作者: 春日武彦
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2015/12/10
- メディア: 単行本
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医学部に合格するような能力もなく、本業がライターなのに、単行本といえばゴーストライターとしてしか書いていない私からすると、見上げるような経歴です。
しかし、春日氏は無力感に不全感、不安感に取りつかれ、占い師のもとを訪ねます。
春日氏が精神科医だと明かすと、占い師は警戒モードを発令。
悩みを聞くといった点では同業者に近い要素があるし、精神科医は科学的な「ふり」をして占いやオカルトを精神の病として関連づけたがるものだ。精神科医と占い師は所詮イカとタコみたいなもので、どちらも触手を持ち墨を吐き水中の生き物としては異形である。互いに相手をグロテスク呼ばわりしているところがある。
たしかに。私も2年ほど横浜中華街で週に1日鑑定をしていましたが、精神科医がお客では、やりにくい。
春日氏は、占い師にとっては、なかなかいいお客さんです。
わたしにとって、占いは必ず当たる(!)のである。もしも占い師の語る未来が間違っていっとしたらそれは占うという行為が運命に作用して変化をもたらした結果であり、だから本当は当たっていたのである。託宣が「当たって」いたとしたら、それは占いという振る舞いが運命に及ぼす影響力が微弱に過ぎなかっただけであろう。
しかし、ページをめくると、要求水準はけっこう高いことがわかります。
わたしにとって「占いが当たる」とは、現在自分が置かれている苦境を占い師がそれぞれの方法論に即って俯瞰し、解説をしてみせられるかどうかを意味する。占いは因果律に馴染まず、むしろシンクロニシティ―や共振といったものに親和性があるという考え方には賛同する。というよりも、因果律では出ない答えを占いには求めるわけだから。したがって、クライアントの運命パターンに相似した何かの形(星座であったり、動物であったり、陰陽五行であったり、タロットであったり)を提示してそれと現状とをいかにスムーズに相関させるか、そこへ個別的な物語をいかに当て嵌めてみせるかが占い師の仕事となる。
客が納得できるストーリーを語れるかどうか。占いのロジックに加えて、共感力、想像力などあらゆる力を総動員しなくてはなりません。
結局、私は、個別化のストーリーを作るのが苦手で鑑定から離れました。
雑誌や書籍の占い原稿を書き続けられるのは、鑑定ほどの個別化は要求されないからです。
オーダーメードでぴったりの洋服を縫い上げる技術はないけれど、パターンメードで大量生産する機械ならあるというわけです。
一口に飲食業といっても、個人経営なのかフランチャイズ店なのかで働き方はまったく違ってきます。教師だってそう。職業カテゴリーで分けられても、個別の事情はさまざま。だから適職を求めて占いに頼るのもありです。
漠然と「開運したいから占い師に相談する」ではなく、春日氏のように、占い師に求めるものを明確にしておくと、ピンポイントで答えが返ってくる可能性が高くなります。
「笑って問えば、笑って答える」。周易では、ふざけた質問をすれば、易神もふざけた答えを返すと言われています。
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20150226/1424914215
春日氏のように占いに物語を求めるお客さんもいれば、船舶の航行目標となる灯台のような占いを求める人もいます。そういうお客さんには、はずしてしまうリスクも高く、かなりのプレッシャーでした。