翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

言葉にして気持ちを伝えよう

日本語学校の作文クラスで教えていると、学生の書いた日本語に心打たれることがよくあります。

自己紹介というテーマで、自分の名前についても書かせました。アメリカ人のブルスの作文。

母は私をブルスと名付けました。英語でガチョウはグースです。私は母にとってブルス・グースでした。ときどき、母は悲しそうに言いました。「いつか、あなたは飛ぶ。ここを出ます。私のグース」

そうだね、アメリカを離れて遠く日本まで来ちゃったんだもの。そりゃ、お母さんは心配でしょう。
母親はいつまでも子供を自分の庇護のもとに置きたいけれど、子供は飛び立ってしまう。アメリカも日本も同じです。

恰幅のいい堂々としたアメリカ人という印象のブルス。
風水師の優春翠が、「しっかりした高齢の奥様なのに、鑑定を進めるうちに、かよわい小さな女の子に見えた」といった話をしたことがあるのですが、私もブルスが小さな男の子に見えるようになりました。

ブルスの作文に啓発され、次の授業のテーマは「手紙」にしました。
母国の両親、あるいはホストファミリー、友達、恋人。伝えたいことを日本語で書きます。

下書きが書き終わったら、和紙の葉書を渡して、両親には母国語で書くように促しました。
英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語…、何語でもいいから、とにかく伝えること。あなたたちが若くして日本留学というチャンスを与えられたのは、両親のサポートがあったからこそ。言わなくてもわかっていると思い込まず、言葉にしよう。

IT世代の学生たちは、メールやスカイプで日々、母国とコンタクトしているのでしょうが、葉書に70円切手を貼って送るように言いました。ありがたいことに、世界中どこでも70円で葉書が送れます。
手書きの文字の感謝のメッセージ、日本語教師の私が学生たちの両親に送るささやかなプレゼントです。


横須賀・汐入のヒデヨシ商店には米兵たちが残したドル紙幣がずらりと貼られていました。日本人は「秘すれば花」と思いがちですが、感謝の気持ちはしっかりと伝えたいもの。伝えたくても伝えられない日が来るのですから。