翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

現代版浦島太郎

日本語学校の作文のクラスで教えています。
大学や専門学校への入学を目指す日本語学校では、論文やレポートの書き方を指導するのでしょうが、私が教えている学校は短期の語学留学が大半で、アニメや漫画を通して日本に興味を持ったという学生も多いので、できるだけ楽しいテーマを取り上げるようにしています。

用紙を渡して「さあ、書いてください」というのではむずかしいので、ひな形の文章を渡します。最初の頃は既存の作文教科書をコピーしていたのですが、私の本業はライターなんですから、自分で書くようになりました。学生の作文を読ませてもらうのですから、まず教師が自分の作文を公開しなくては。

「自己紹介」「私の家族」「私の国」「好きなもの」「日本に来た理由」などについて書き、先日は創作にチャレンジしました。

浦島太郎を使いました。
ひらがながやっとという学生には、「浦島太郎が海辺を歩きます」「子どもたちが亀をいじめます」「浦島太郎は亀を助けます」「亀はありがとうと言います」「いっしょに海のお城へ行きましょう」…といった具合にパワーポイントでイラストやauの三太郎コマーシャルの画像を見せながら、物語を説明。
上級者には、別の切り口で。
「単なる昔話だと思いますか? 皆さんだって、浦島太郎です。何かに導かれて日本に来て、東京で楽しく過ごして、自分の国に帰ってみたら、すっかり変わっていて、そして自分はすっかり年を取ったと感じるかもしれません」
アメリカ人の学生にはワシントン・アーヴィングの『リップ・ヴァン・ウィンクル』がしっくりきます。残念ながらアイルランド人はいないので、ケルト神話の『常若の国(ティル・ナ・ノグ)』には触れられませんでした。

「なにかのきっかけで別世界に行く」をテーマに各自が作文を書き、宇宙を舞台にしたスケールが大きい話から、日本の妖怪が登場したり、学生の作文を読むのは講師の役得です。

浦島太郎のパロディを書いた学生もいました。
「うろたは、うらしまたろうの反対です。うろたは、毎日、海へ行きます。たくさん魚をとります。ある日、うろたは亀と会いました。でも何もしませんでした。家に帰って、母とおいしい魚を食べました。一週間…一ヶ月…一年…十年。うろたはいつも母といっしょにいます。うろたはとても幸せです。そのまま年をとりました。」

うん、そういう人生もあっていい。
でも、君はもう日本に来ちゃったんだ。もしかしたらホームシックでお母さんに会いたいのかも。メキシコで家族と一緒にいたら、それはそれで幸せだっただろうけれど、もう新しい世界を見たから、同じではいられない。

生きている限り、私たちは転がり続けなくてはいけないのだから。


観音崎灯台に向かう途中に出会った猫。