翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

フランス人の登竜門

日本語教師養成講座に通っていた頃、文型の導入を練習するのも大切だけど、日本オタクに向けて漫画喫茶で一通りの基礎知識を得るほうが重要ではないかと考えたものです。
日本語学校の職員室では、「授業準備が忙しいので、漫画やゲームにうつつを抜かしている暇なんてない」という先生が多数派です。職員室ではなるべく目立たないようにしていても、教室に入ってしまえばこっちのものです。

この夏、ポケモンGoがリリースされて、学生は大興奮。なにしろポケモンの本場・日本で遊べるのですから。
ポケモンGoをやっていると、初対面の日本人と話ができるので、とてもうれしい」という声も聞きました。

日本語学校の作文のクラスでは、週単位で新しい学生が入ってきます。
まずチェックするのが学生の国籍。
フランス人学生の場合、ほとんどが日本オタクです。10代から20代の彼らの子供時代に、日本のアニメがフランスで大量に放映され、日本に興味を持ったそうです。
もちろんポケモンGoをやっています。

レベルを聞くと19。ひらがながおぼつかなくて、ローマ字を見ながら格闘しているのですが、ポケモンの話題となると、目の色を変えて日本語を話そうとします。
「私のレベルは23です」と告げると「すごーい」と尊敬のまなざしを向けられました。
自宅にポケストップが3個あるため、引きこもりでもどんどんレベルを上げることができるのです。日本語の知識とか、教え方で尊敬されたいものですが、それはいつのことになるやら。

「一緒に歩いているポケモンは?」と聞くと「コイキング」とのこと。
私は単に猫が好きなのでニャースを連れています。コイキングはあまりかわいくないのに、あめを集めてギャラドスに進化させたいそうです。

おお、これは格好のネタだと、勢いづいて説明します。
ギャラドスはドラゴンです。コイがドラゴンになります。どうしてですか。わかりますか」
滝を登った鯉は竜となるという中国の故事、登竜門です。
鯉が竜門に向けて飛び上がっている姿は、科挙の試験に合格するたとえでもあり、今でも香港や台湾では試験運を上げるお守りとなっています。

アニメを通して日本にあこがれを抱き、実際に来日して日本語を学ぶ学生は、登竜門にチャレンジしている気分なのでしょう。「将来は日本語とフランス語の通訳になりたい」という夢も語っていました。

そういえば、去年我が家に滞在したヘンリク君もセリーグ6球団のうち、「どうして広島はカープなんて弱そうな名前をつけているんだろう」と不思議がっていました。

登竜門について学んだのは、占い学校の四柱推命の講座です。
中華料理には鳳凰をかたどった縁起のいい料理がありますが、登竜門の故事から鯉の料理は竜とみなされます。

日本語教師の仕事はうまくいかなくて落ち込むことばかりですが、たまにこうした楽しみもあり、できるかぎりは続けていきたいものです。


島根で食べた山陰名物のノドグロ。東京ではたいそうな高級料理となります。