翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

「あなたの言葉でなければ、いけません」

小泉八雲ゆかりの松江の地を訪ねてみたいと思い立ったのは、『怪談』を好む外国人学生が多いからです。

妖怪や幽霊はおそろしいけれど、心惹かれるものです。自国の怪談と比べるのも興味深いもの。
日本のお話そのままでなく、小泉八雲というフィルターを通すことで、外国人学生の心に染み入っていくように思いました。

アイルランド人の父、ギリシャ人の母から生まれ、キリスト教の神学校の教育に反発し、ヴ―ドゥ教や神道に惹かれたラフカディオ・ハーン小泉八雲)。
ハーンが来日したのは、1890(明治23)年ですが、日本のアニメやまんがにハマったり、村上春樹や武士道から日本語を学び始めた現代の外国人学生の姿に重なります。

松江の小泉八雲記念館『怪談』コーナーに、ハーンの妻である小泉セツの言葉が紹介されていました。
ハーンは、文献からではなくセツの語りを通して日本の昔話を収集しました。まず、あらすじを聞き、おもしろいと感じると、くわしく話すように頼みました。

セツは専門の語り部ではありませんから、本に頼ることもあったのでしょう。
するとハーンは『本を見る、いけません。ただあなたの話、あなたの言葉、あなたの考えでなければ、いけません』と注文を出したそうです。

小泉セツのフィルター、そしてハーンのフィルターを通すことで、日本の昔話は世界の人々の心に届く"KWAIDAN"となったのでしょう。

簡単な操作でパパッとコピペができる時代、「自分の言葉」で表現しないのなら、意味がない。
このブログもそうだし、本業の原稿書きはずっとそうやって食べてきました。
そして、日本語教師の仕事も、『教え方の手引き』通りに授業なら、生身の教師は不要です。

経験不足から、なかなか思う通りの授業はできないことが多いのですが、ライターであると同時に優秀な英語教師でもあったハーンの言葉に励まされました。


松江の小泉八雲旧居は、江戸時代中後期に建てられた松江藩士の武家屋敷です。机の上のほら貝は、ハーンが人を呼ぶ時に吹き鳴らしていたもののレプリカです。