翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

人生足別離 さよならだけが人生だ

私が日本語を教えている学校は、週単位で学生が入学し、修了します。

せっかく親しくなっても、必ず別れが訪れます。「絶対、また日本に来ます」というのですが、先輩の先生によると、本国に帰ってしまうと日本はやはり遠くて、再来日を果たす学生は少数派だそうです。

子供の頃、長期の休みになると、母方の実家に滞在した時のことを思い出します。
すっかりなじんでしまい、家に帰りたくなくなります。別れ際、祖母に「またすぐ来るから」と言うと、「この前もそう言って帰ったのに、ずいぶん長いこと来なかったじゃない」と祖母。家に帰ってしまうと、慣れ親しんだ環境に戻り、母の実家のことを忘れてしまうのです。
名残惜しそうに帰国していく学生も、家族や友人と再会すれば、日本は遠い世界になってしまうのでしょう。

8世紀の詩人、干武陵(ウブリョウ)の 「歓酒」。

勸君金屈卮
滿酌不須辭
花發多風雨
人生足別離

井伏鱒二の訳が有名です。

コノサカズキヲ 受ケテオクレ
ドウゾナミナミト ツガシテオクレ
ハナニアラシノ タトエモアルサ
サヨナラダケガ 人生ダ

日本を一時的に訪れた外国人と接しているから、「さよならだけが人生だ」と実感しますが、日本人だって同じです。
人生を俯瞰してみれば、すべての出会いは別れとつながっています。

「いつか死んでしまう」と思うと一日一日が貴重なものに思えるように、「必ず別れる」と思うとすべての人間関係がかけがえのないものになります。


イタリア人のマルゲリータは、3ヶ月間、作文のクラスに在籍し、熱心に日本語を勉強していました。日本の前に中国で学び、「梅吉」というニックネームをつけられたというので、「マーガレットはキク科だし、『吉』は男の子の名前だから『菊子』がいいかも」とアドバイスしました。
最後の授業の日に一緒にご飯を食べて、「先生、またすぐ日本に来ます」と真剣なまなざしで語っていましたが、今頃、ボローニャでなつかしい我が家を満喫していることでしょう。