翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

村上春樹とテッド・グーセン

NHKラジオの『英語で読む村上春樹』。
cgi2.nhk.or.jp

世界中で愛読されている村上作品の背景には、翻訳家の存在があります。その一人、テッド・グーセンのインタビューが紹介されました。
テッド・グーセンは1980年代後半に来日し、明治大学で日本文学を研究。当時『ノルウェーの森』がベストセラーになりましたが、海外で村上春樹はほとんど知られていなかったそうです。「もっと広く読まれるべきだ」と考えたテッド・グーセンは編集者と連絡を取り、短編『カンガルー日和』『スパゲティの年に』を英語に翻訳しました。

村上春樹とテッド・グーセンの出会いの話に感動しました。
日本から帰国し、トロントに住むテッド・グーセンに、アメリカ大陸をドライブ旅行中の村上春樹が電話をかけます。
電話で自己紹介した村上春樹にテッド・グーセンは「うちに遊びに来ないか」と自宅に招待します。
朝の電話で、その日の午後には二人は会って意気投合。すばらしい時間を共有して友達になり、お互いの父親の話で盛り上がったそうです。

いつも私が求めているのも、こういう出会いです。ネットが普及し、突出した才能を持たない凡庸な人間にもこうした出会いが可能になりました。
そして、ネットを使わなくても、日常生活でもこうした「出会いの種」を見つけることができます。

d.hatena.ne.jp

日本語学校の作文クラスで、修了間近の学生に「日本のおみやげ」というテーマで作文を書かせました。とても優秀で熱心な学生なので「日本でびっくりしたこと」「将来の目標」もすらすら書き上げてしまい、苦肉の策で与えたテーマです。
女子学生ならうまくいくのですが、男子学生には失敗でした。買い物は好きじゃないそうです。
「私が日本のおみやげを買うとしたら、盲亀の浮木です」と書いてきました。
私のクラスでは辞書としてスマホの使用を解禁しているので、こういうぶっ飛んだ日本語を書いてくる学生がいるのです。

盲亀の浮木」とは、仏教用語の一つです。
大海の底に住む目が見えない亀が、百年に一度、海上に浮かび上がったタイミングで、一本の浮木の穴へ頭に突っ込むことから、めったに起こらないことのたとえとされています。郷ひろみが著書で『二谷友里恵との出会いは盲亀の浮木だった』みたいなことを書いて、背伸びしてインテリぶってると揶揄されたことで、この言葉をおぼえました。
まさか外国人学生が作文に書いてくるとは!

彼の作文にメッセージを書きました。
『あなたと私が東京の日本語学校で出会ったのも、盲亀の浮木。52億人以上の人間がいる地球では、一つ一つの出会いが盲亀の浮木なのだと気づきました』


台北の街角で出会った猫。