翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

「命長ければ辱多し」

徒然草』は、中学や高校の古典で習いますが、10代の若者にはピンと来ません。
年を重ねてこそ、『徒然草』をしみじみと味わえます。

第7段。
「命あるものを見るに、人ばかり久しきはなし。かげろふの夕べを待ち、夏の蝉の春秋を知らぬもあるぞかし」
この世に生きるものを見ると、人間みたいに長く生きるものはない。かげろうは夕方を待って死に、夏お蝉は春や秋を知らずに死んでしまう。

「命長ければ辱多し。長くとも、四十に足らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ」
長く生きると、恥をかくことも多くなる。長生きをしても、40歳手前で死ぬのが見苦しくない。

うわー、40手前で死んでも長生きなのか。
10代の頃は、40代なんて遠い先のことだし、「昔は寿命が短かったから」と冷静に流していたのに、50代半ばにして、この段を読むとめまいがしてきます。

恥をかかないようにおとなしくしていればいいのに、新しいことがやりたくなり、この4月から外国人に日本語を教え始めました。

漢字を教えるのは、最初はおもしろかったのです。
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20160410/1460253685

でも複雑な漢字となると冷や汗もの。
30年近くはキーボードを叩いて日本語を書いてきたので、漢字の手書きからは随分遠ざかってきました。そもそも書き順なんて意識したのは小学生の頃で、漢和辞典で正しい書き順を調べてその通り書くと、漢字のバランスが崩れてしまいます。
あげくのはてに、突き出るところが突き出なくて「先生、その漢字、まちがっています」と生徒から指摘される羽目に。熱心な学生は真剣に漢字の練習をしているので「とめはめはらい」も気にするのです。「私の漢字は信用しないでください」と先生らしからぬ言い訳をして、練習用の見本は印刷されたカードを貼ることにしました。

外国人の前で漢字をまちがえるなんて、兼好法師なら憤死しているところでしょう。

しかし、40手前で死ぬのが「めやすかるべき」と書いたのに、兼好法師は70近くまで生きたそうです。
誰しも自分の寿命をコントロールすることは不可能です。
家にひきこもっていれば余計な恥をかくこともないでしょうが、それでは退屈してしまう。刺激を求めるなら、みっともない生き方を続けるしかありません。


稚内の海岸にて。こんな小舟で沖に出る時、どんな気持ちになるのでしょうか。