翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

無意識の知恵

前回紹介した「つぐみの髯の王さま」は、女性の心の中の男性(アニムス)がテーマでしたが、男性の心の中の女性(アニマ)については、「なぞ」という昔話が取り上げられています。

女性の心にはアニムスがいて、男性の心にはアニマがいるわけですが、キャリアウーマンやイクメンの例を出すまでもなく、現代の日本では男女の役割がクロスオーバーしていますから、アニマとアニムスの両方がいるという人が多いのではないでしょうか。

「なぞ」のストーリー。
きれいだけど高慢なお姫さまが、おふれを出しています。
「自分の解けないなぞを出す者があったら、その者と結婚する。ただし解けてしまったら、首をいただく」
すでに9人の男が首を取られています。主人公の王子さまもお姫さまの美しさに目がくらみ、命を賭けてみるというお話です。
昔話に登場する美女は、このお姫さまのように男性を危険に満ちた未知の領域へと導くアニマ像が投影されたものだと河合隼雄氏は解説しています。

なぞに関する日本の昔話も紹介されています。
「播磨糸長」では、西から来たきれいな娘に住所を聞くと「処はふさんの麓」、家の名は「はるば屋」、名前は「四月生えに五月禿げ」と答えます。娘に会いたい一心で、主人公の手代は、山寺の和尚さんのところへ。
将棋を指しながら、「ふさんの麓」と言って打つと、「草津の町に」と和尚さんが応じます。
「はるば屋」は「あめがた屋」、「四月生えに五月禿げ」は「お竹さん」。
そこで草津のあめがた屋のお竹さんを訪ねていき、結婚するというお話です。

和尚さんに直接、「このなぞはどういう意味ですか」と聞くのではなく、将棋を指しながらというのがポイントです。意識は将棋に向かっているから、なぞの答えは無意識の知恵によってもたらされるのです。

意識的に考えて解決できるものは、なぞではありません。

河合隼雄氏の別の著書に「子供を亡くしたお母さんの『なぜあの子は死んだのか』という問いに答える」という一文がありました。
医学的に答えることはできますが、母親が知りたいのは、「よその子ではなく、よりによってなぜわが子が…」という問いに対する答えです。

そこまで深刻でなくても「なぜ私は結婚できないのか」「なぜ仕事がうまくいかないのか」
といった、答えのない問いを私たちはたくさん抱えています。
占いは、その答えを得るための一つの手段ですが、占い以外にも謎を解く方法はあるはずです。


フィンランド、ハメーンリンナの9月初旬。日本生まれのヴィッレと会って、彼の幼い娘と息子と一緒に森を散策。うっとりするような空が広がり、日本の秋と違ってなかなか暮れませんでした。