翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

家事でアニムスを鍛える

英語で学ぶ仏教講座で十牛図が取り上げられたことから、河合隼雄氏の著作を読み直しています。
大学時代にユング心理学を学び、一通り読んでいたのですが、数十年の時を経て再読すると、なかなか味わい深いものがあります。
たとえば、この本。

昔話を通してユング心理学を学ぶ楽しい本です。

しかし、若い頃の私は「つぐみの髯の王さま」が少し苦手でした。
「きれいなことは桁外れにきれいですけれど、ひどく気位が高くていばりんぼ」のお姫様のお話です。
父親の王様は娘を結婚させようと宴会を開くのですが、姫は集まった男性全員に辛辣な言葉を放ちます。デブには「酒樽さん!」、長身には「のっぽでふらふら腰砕け!」、チビには「ずんぐりむっくりぶかっこう!」、血色が悪い男性には「死神じゃないの!」といった具合。
上座にいた王様はあごがちょっと曲がっていたので「まるでつぐみのくちばしみたい」と笑いものにしたことから、「つぐみの髯の王様」と呼ばれるようになります。

姫のあまりのわがままぶりに業を煮やした父は、乞食と結婚させます。
蝶よ花よと育てられたお姫様がいきなり乞食の妻となり、火をおこして料理をしたり、糸紡ぎを命じられます。うまくできるはすがなく、夫からは「こいつ、からきしものの役に立たねんだからなあ」と屈辱的な言葉を浴びます。

専業主婦だった母から家事を手伝うように言われると、いつも勉強を口実にかわしていた私。兄が手伝わなくていいのなら、私だって免除されるはずだと理屈をこねていました。
「つぐみの髭の王様」の姫のように、いつか「役立たず」と言われるんじゃないかという恐れもあったのですが、家事は嫌いでした。

文章を書くのが好きだったのと数々の幸運に恵まれ、フリーランスのライターとして生計を立てることができたのですが、駆け出しの頃は主婦雑誌で家事の記事もよく書いたものです。
母は「あなたが掃除や料理の記事を書いているの!」と絶句。記事を書くだけでなく、自分の家庭を持つと家事をしないわけにはいきません。

河合氏は「アニムス(女性の中の男性性)を真に発展させようとする人は、母性を発展させなくてはならない」と説いています。

アニムスに鍛えられない母性は余りにも泥くさく、母性によって支えられないアニムスは余りにも冷たい。姫はアニムスの命じるままに母性的な仕事に手を出してみる。

最低限の家事をこなすだけで済ませていたのに、カウチサーフィンやホームステイで外国からの客人を迎えるために部屋を整え、料理をふるまうようになりました。

家事は今でも苦手ですが、家事を通して「広い世界(海外)と接したい」というアニムスの願いは叶いました。


フィンランド西部のお屋敷のインテリア。