翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

2つの誕生日、2つのチャート

長らく雑誌の占い原稿を書いてきましたが、駆け出しの頃は、不特定多数の読者に向かって運命を予言するなんて大それたことをしていいのか悩んだものです。

しかし、こう考えることで少し気が楽になりました。
私が天のお告げの一部を文章としてパソコンに打ち込んで編集部に送り、それが活字となって、たまたま一人の読者の目に入る。その一連の流れが卜術(ぼくじゅつ/偶然を利用した占い)と同じです。

雑誌の占いでは、西洋占星術なら太陽星座、九星気学なら生まれ年の本命星、四柱推命なら生まれた日の日干など、9〜12パターンで占いますが、対面鑑定では、生年月日だけでなく生まれた時刻があるほうが望ましいとされます。
四柱推命は、年、月、日、時の四つの柱で占いますし、西洋占星術も生まれ時間がわからなくてはハウスが定まりませんし、月の星座が違ってくる場合もあるからです。
しかし、生まれた時刻というのは、けっこういい加減です。出産で朦朧とした母親の記憶は、あいまいなことが多いし、母子手帳産婦人科医がまとめて記載するため数時間のずれが生じることもよくあるそうです。

一昔前は、田植えや刈り入れの時期に子供が生まれてもすぐに役所に届けず、農閑期になってから届けたので本当の誕生日と戸籍上の誕生日が異なるというケースもありました。戸籍上の誕生日は占いでは意味がないかというと、そうではなく、その人の社会的な面をよく表していたりします。

ダイアナ妃にも2枚のチャートがあるそうです。

占いはなぜ当たるのですか (講談社文庫)

占いはなぜ当たるのですか (講談社文庫)

この本によれば、ダイアナ妃の出生時刻には二つの説があり、どちらのチャートでも彼女の人生をじつにうまく説明することができるそうです。
そして、「本当の出生時間を追求して正確なチャートを出すべきだが、二枚とも「有効」であってもかまわないのではないか」というジェフリー・コーネリアスの意見が紹介されています。

ヘンリク君のホームステイの前に占い師仲間の天海玉紀さんと、maruさんと本格カレーを食べに行きました。
ヘンリク君の学校からプロフィールが送られてきて、誕生日も記載されていたので、玉紀さんとmaruさんに西洋占星術でざっくり読んでもらいました。(前回、「無料で占ってはいけない」と書きましたが、占い師同士なら、チャートや命式について意見を交換することはよくあります。)

7月4日生まれで、太陽、月、水星が蟹座に集中。思いきりかわいがって世話を焼いても煙たく思われることはなさそう。嫉妬深いところもあるから、他のフィンランド人男子の話は控えたほうがいいというのが二人の見立て。
フィンランドの若者はしっかりしているといっても、まだ18歳。親元から遠く離れた東京での3週間はさぞ心細いことでしょう。いそいそと漢字練習用の方眼ノートやフリクション・ボールペン(アンネが感動して何十本もフィンランドに持って帰りました)などの文房具、甚平、お菓子などを買い揃えました。ホームシックにならないように、ムーミンの絵も飾りました。

のどかなヘルシンキ郊外と人口過密の東京では環境がまったく違います。
初日の登校時には緊張からか、スマホを部屋に忘れてしまいました。いざという時のために私の名刺を渡しておいたのですが、「間違った電車に乗って迷っても、連絡することができないと思うと不安でしかたなかった」といいます。

そんなこともあり、最初の数日間は、過保護の母親のようにはらはらしながら送り出しました。
ミネラルウォーターと休み時間に食べるちょっとしたお菓子を持たせ、ヘンリク君は玄関先で日本語で「スイカ、スマホ、さいふ…」と声を出して忘れ物がないか確認します。

来日したのが6月28日で、7月4日の誕生日を日本で迎えることになるから、バースデーケーキをどうするかまで考えました。
誕生日が近づき、「もうすぐあなたの誕生日だから…」と言いかけると「僕の誕生日は4月7日だよ」とヘンリク君。
あわてて学校から来た書類を見返すと、日本語ではっきり「7月4日」と書かれていました。英文表記を転記する際にまちがえたのでしょう。

改めて4月7日でヘンリク君のホロスコープを観ると、天体が牡羊座に集中。
そういえば、アイスクリームのフレーバーでもなんでも「これまで食べたことのない味」「やったことのない体験」を求めるチャレンジャーです。
日本語を選んだのも、一族の中で自分が学習者第一号になるからだと言ってました。英語やドイツ語、フランス語では、祖父母や両親の後追いでしかないからと。

「この家のルールを教えてほしい」と言われて、私の太陽星座である射手座がこう答えました。
「ルール? 特にないけれど。私は自由業で自宅が仕事場だから、決まった時間に何かをしなくてはいけないことがないし。寝るのも起きるのも好きな時間にどうぞ。門限もないけれど、終電には乗り遅れないでね」

そして、今思えば、次の台詞が牡羊座のヘンリク君の心をぐっとつかんで、打ち解けるきっかけになりました。
「私があなたに望むことはただ一つ。東京滞在を心から楽しむこと。もし私があなたの立場で、ホストに『あれをしなさい』『これをしてはいけません』と言われ続けたら、逃げ出すだろうし」
束縛を嫌うのは射手座の真骨頂であり、牡羊座の強いエネルギーをどんどん煽って広げていくのが射手座です。

帰国後のヘンリク君からのメールには、東京での滞在について"Things couldn't have gone any better."とありました。
若いヘンリク君は、新しい可能性を切り拓くために、単身で来日。一方の私は残された人生を刺激的にするためにフィンランドのつながりを求めていました。
「人生の目的」を追求する時に、太陽星座の面が最も強く出るものです。その意味で、牡羊座と射手座のコンビネーションはぴったりと息が合い、心躍る日々となりました。

そして、最初の3日間だけは、初来日、初対面の緊張をやわらげるためにも、ヘンリク君のニセ蟹座チャートがとても役に立ったのでした。


高井戸の温泉で湯上りにかき氷を食べるヘンリク君。
サウナ好きのフィンランド人は、日本の温泉にも違和感なくなじみます。ただし、日本のサウナにテレビがあるののはびっくりします。フィンランドはサウナは心身を浄化する特別な場所だからです。