翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

ワイル博士の日本留学

外国人学生をホームステイさせるなんて想像もしていませんでしたが、ヘンリク君が到着して1週間が過ぎ、刺激的で楽しい毎日を送っています。ヘンリク君は聡明で礼儀正しく、まったく手がかかりません。

多感な18歳という時期に、家族と離れて初めてのアジアで過ごす3週間は彼のこれからの人生にどんな影響を及ぼすでしょうか。
ヘンリク君が日本を好きになり、次は日本の大学へ留学し、日本と関係する仕事に就けばいいのにと、妄想が広がります。

息子にぞっこんの過保護の母親のようになり、ヘンリク君に尋ねられたことにうまく答えられないとあわててしまいます。
たとえば、「日本のコンセントに差し込むためのアダプターは近所で手に入る?」と聞かれると、「地元の小さな電器店にあるだろうか? 新宿の量販店まで行くか? それともついでに秋葉原まで足を伸ばすか? デジタルネイティブなんだからパソコンの充電ができなくなったら困るだろう、何とか早く手に入れてあげなくては…」みたいな思いが頭の中を駆け回ります。

やたらとあせっている私に対して、ヘンリク君の口癖は"It is not a big problem."。
「大した問題じゃないから、そんなに深刻にならないで」と諭されると、どちらが年上かわからなくなります。

4月末に椅子から落ちて腰を強打したのをきっかけに、アンドルー・ワイル博士の本を読みました。
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20150521/1432171631

『癒す心、治る力』の解説で、ワイル博士は高校生の時に交換留学で日本にやって来たことを知りました。そういえば映画『地球交響曲7番』でワイル博士がおいしそうに日本食を食べていました。

まったく言葉の通じない国で過ごしたことで言語に興味を持ち、言語学部に進学。その後、心理学や植物学を学び、最終的には医学部へ。西洋医学とは異なるアプローチを研究して統合医学の第一人者となったのは、日本の留学体験も一つの大きな要因でしょう。

留学やホームステイというと、国際的で楽しそうなイメージですが、文化の異なる生活に溶け込むことは容易ではありません。
ワイル博士が留学したのは1950年代末。日本人家庭にホームステイしたものの、意思の疎通ができずとても苦労したようです。
最初の夜の入浴で便意を催し、アメリカはバスとトイレが一体だから日本の浴室も同じでどこかにトイレがあるはずと思い込み、ヒノキの桶に用を足したというエピソードが紹介されています。

「僕はそこまでひどい間違いをしないようにしたいものだ」とヘンリク君。
私はこんなことを話しました。
「そんな失敗があったにせよ、ワイル博士は日本での経験を活かして統合医学の道に進んだということをあなたに伝えたかった。あなたの日本滞在も、これからの人生にポジティブな影響を与えるのといいのだけれど。そして、私の人生も、あなたをホストすることで変わっていくはずだ」

下敷きとなっているのはユングの名言です。
The meeting of two personalities is like the contact of two chemical substances:
if there is any reaction, both are transformed.
(二つの人格の出会いは、化学物質の接触に似ている。何かの反応が起これば、両者ともに変容する)

ワイル博士の『癒す心、治る力』にも、食生活や生薬、運動などに加えて、人間関係に注意を向けることの大切さが書かれています。

ある人に会うと、ほかの人に会ったときよりも幸福を感じ、自分がよりよく、肯定的になったような気がすることはないだろうか? もしそういう人がいたら、なるべくその人といっしょにいる時間をふやして、反対の気分にさせる人との時間をへらすようにこころがけるといい。われわれの霊的/精神的な自己は、ある意味で、たがいに共鳴しあう。その相互作用が肯定的なものであれば、人と人との結びつきがもっとも強い癒しの力となり、物質界でのさまざまな有害な影響を中和する力となる。