岸見一郎先生のアドラー心理学の著作を読んでいると、時々ナチスの強制収容所の話が出てきます。
アドラー自身は、アメリカへ活動拠点を移しましたが、アドラーの弟子の多くは収容所に送られて亡くなったそうです。
弟子の一人、アルフレッド・ファロウはダッハウの強制収容所でアドラーから聞いた「二匹の蛙」のエピソードを多くの人に話して、人々を無気力から奮い起こしたそうです。
「二匹の蛙」というのは、ミルクの壺に落ちた二匹の蛙のうち一匹は、もうだめだとあきらめて溺れ死んだけれど、もう一匹はなんとかしようともがいているうちに、足の下のミルクがチーズになって固まったので、その上に乗って脱出できたという話です。
岸見先生の説明。
楽天主義は、何が起こっても大丈夫だと思って何もしない。
楽観主義は、何とかなるかどうかわからないけれど、とにかくできることをする。
できることをしているうちに、事態が変わることがよくあります。自分が思い描いていた結果と違っていても、何もしないでいるよりは好転しています。
たとえば、試験の合否の知らせを待つという状況。あるいは、恋人に告白して返事を待っている時。
試験も告白も終わったのだから、何をしても結果は変わりませんが、不安のまま電話を待ったりメールチェックばかりしていると、ますます不安になります。
結果は気になるけれど、とりあえず部屋を掃除したり、スポーツクラブで汗を流す。結局、思い通りにならなかったとしても、きれいになった部屋、すっきりした身体なら、立ち直りも早いはずです。
先月初めに訪れた島根・温泉津温泉の元湯。傷ついた狸が湯で傷を癒した故事にちなみ、看板に狸がいます。健康な時はもちろん、そうでない時も温泉に行くという選択肢がある日本に生まれて本当にラッキーです。「温泉なんかで深刻な病が治るわけがない」という人もいるでしょうが、暗い部屋で悶々としているより、ずっといい過ごし方です。