翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

私たちはジェーン・オースティンの時代から進化したか?

NHK実践ビジネス英語、1月後半のテーマは、"Reading in the Digital Age"(デジタル時代に読む)でした。最終回をid:kamomeskyさんが書き起こしてくださるので、いつも助かっています。
http://d.hatena.ne.jp/kamomesky/20150130/1422589370

ジェーン・オースティンのゆったりとした繊細な文体を電子書籍で読むのは無理がある」という話が出てきます。

18世紀イギリスの片田舎を舞台とする『高慢と偏見』の書き出しは、英文学史上、最も有名なものの一つとされています。

It is a truth universally acknowledged that a single man in possession of a good fortune, must be in want of a wife.
お金持ちの独身男性はみんな、花嫁を求めているものだ。普遍的に認められている真理である。

高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)

高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)

高慢と偏見』に匹敵する日本の小説は、谷崎潤一郎の『細雪』。

細雪 (中公文庫)

細雪 (中公文庫)

導入は、三女・雪子に持ち込まれた見合い話。「サラリーマンやねん」と説明する次女・幸子に、四女・妙子が「なんぼぐらいもろてるのん」と質問します。戦前の日本も、18世紀イギリスと同じように男性の資産や稼ぎによって女性の人生が大きく左右された時代です。

当時のイギリスの法律により、娘には相続権がなく、女しか生まれなかったベネット家の五人姉妹の結婚相手選びは切実です。父親が亡くなれば、財産はすべて遠縁のコリンズ氏が相続してしまうのですから。

コリンズ氏は、「それなら人助けのためにも、娘の一人と結婚してやろう」と一家を訪問します。
ところが、このコリンズ氏がとんでもない俗物で中身は空っぽ。コリンズ氏は次女のエリザベスに求婚しますが、エリザベスにとっては、とても承諾できる話ではありません。

エリザベスが断ったと聞いたベネット夫人は、「絶対にお受けしなさい。いやだというなら、こんな娘の顔は二度と見たくない」と激怒。そして夫に説得を頼みます。
このときのベネット氏が娘に語った言葉が、最高です。

An unhappy alternative is before you, Elizabeth. From this day you must be a stranger to one of your parents. Your mother will never see you again if you do NOT marry Mr Collins, and I will never see you again if you do.
どっちを選んでも困ったことになるね、エリザベス。今日からお前は両親のどちらかと縁切りになる。お前がコリンズさんと結婚しなければ、お母さんとは縁を切るというし、コリンズさんと結婚するなら、私はお前と親子の縁を切る。

父親のベネット氏にとって、才気あふれるエリザベスは五人姉妹の中の一番のお気に入りです。ベネット氏は彼女に、財産のためではなく、愛情による結婚を強く望んでいたのです。

最終的にエリザベスが結ばれたのは、資産家のダーシーです。
しかし、ダーシーはプライドが高く気むずかしい一面があり、周囲はエリザベスとは犬猿の仲だと思い込んでいました。
ベネット氏はエリザベスにこう語りかけます。

He is rich, to be sure, and you may have more fine clothes and fine carriages than Jane. But wil they make you happy?
確かに彼は金持ちだよ、ジェーンよりもいい服も着られるだろうし、立派な馬車をもてるかもしれない。だが、それで幸福になれるのかね?

ジェーンというのはエリザベスの姉で、ダーシーの友人である資産家と婚約しました。

My child, let me not have the grief of seeing you unable to respect your partner in life.
生涯のパートナーを尊敬できない娘を見る悲しみを父に与えないでくれ。

こういう箇所を読むと、世界はジェーン・オースティンの時代からどれほど進んだのだろう、むしろ退化したのではないかと思ってしまいます。


余市のニッカ蒸留所に再現された旧竹鶴邸。日本初のウイスキーを作りたいという夫を尊敬できたからこそ、リタはスコットランドを離れ遠い日本に来る決心がついたのでしょう。