翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

幸せの閾値を低くする

赤毛のアン』の時代は洋服自体の数が少なくて、「ふくらんだ袖」のドレスをプレゼントされただけで、夢の中にいるようだと感動できました。

それに対して、クローゼットに詰め込んだ服をいかに整理するかに悩む現代生活。

選択肢が増えるのは、基本的に幸せなことだけど、あまりにも増えすぎると迷ってしまい、「あっちを選んだほうがよかったか」と選ばなかったものについて考えるようになり、幸福度は下がります。
シーナ・アイエンガー教授の『選択の科学』で、そんなことを学びました。

ホリエモンの「刑務所」シリーズを読むと、「幸せの閾値が低くなった」という表現がよく出てきています。
閾値(「いきち」あるいは「しきいち」とは、ある反応を起こさせる最低の刺激量」のこと。「幸せの閾値が低い」とは、ちょっとしたことで幸せを感じられるという意味です。

六本木ヒルズに住んで贅沢の限りを尽くしたはずのホリエモンが、おやつにガリガリ君が配給されるというだけで、小躍りして喜ぶ。山崎パンのバニラクリームロールを極上スイーツだと感じる。
シェーブローションや洗顔フォームが買えるようになることで喜び、独房に飾る花の美しさを愛で、布団が干してあるだけで幸せになる。

ホリエモンはもともと精神力が強い人らしく、塀の中でもパイロット免許取得に向けて航空工学や気象学を学び、大量に本を読んで映画を観て、メルマガの原稿を書く。
夜9時に就寝なので、自由に使える時間は少なく、時間あたりの効率を常に考えていたというホリエモンは根が勤勉なのでしょう。

酒を飲まないから脂肪肝がすっかり正常化し、体重は25キロ減少。20年かけて30キロ太ったのが、2年で痩せて若い頃の65キロに戻ったそうです。

ホリエモンが淡々とメニューを紹介する長野刑務所の食事が健康的でおいしそうで、うらやましくなりました。

しかし、刑務所グルメを堪能するために罪を犯すわけにもいきません。

面会に来たサイバーエージェントの藤田社長に「事件から8年くらいか…。無駄な8年すごしたよね」と言われ
「無駄っていうな(笑)」と反応するホリエモンですが、受刑した1年9ヶ月は決して無駄ではありません。
スリムで健康になるだけでなく、一種の出家生活のようなもので、精神的にも大いに浄化されたのではないでしょうか。

江戸時代の人相の大家、水野南北は若い頃に酒を飲んでは喧嘩に明け暮れるすさんだ生活を送り、ついには牢屋に入れられます。
牢内で罪人の顔を観察することで、人相に興味を抱いたのが観相家となったきっかけです。
江戸時代の牢での食事は現代の刑務所のように栄養管理されておらず、ひどく貧しいものだったと想像しますが、水野南北は節食することで開運すると説きました。
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20140914/1410657922

豊かで自由な現代に生きるありがたさを実感するために、時には質素で不自由な環境に身をおいてみるのはとてもいいことです。たとえば、修道院やお寺の宿坊に泊まったり、断食施設に入所するなど。

絶えず欲望が刺激される娑婆にいては、欲望に負けて禁欲生活はむずかしいものですが、一定期間、「食品と消耗品以外は買わないという買い物断食をしてみるのもいいでしょう。

フィンランド映画『365日のシンプルライフ』を観て以来、1年間を目標に買い物断食を続けています。
先日、手芸が趣味の友人から手縫いのブックカバーをプレゼントされました。
買い物断食で、物に対する幸せの閾値が低くなっているので、ものすごくうれしく感じました。この2ヶ月で初めて手にした新しい物でしたから。



二種類の布を組み合わせて作られたお洒落なブックカバー。しおりもついています。書店でもらう紙カバーと違って、手障りが優しい手触りです。