翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

入棺体験で「生」を実感

映画『365日のシンプルライフ』を観て、これからはモノを買うより体験を求めることにしました。

だからといって手あたり次第に体験してみるわけにもいきません。
東京に暮らしていると、あらゆる種類のイベントが開催されていますが、時間もエネルギーも限りがあります。

誰かから教えてもらったり、偶然が重なって情報が入って来るなど、「やってみたい」と思える自然な流れがベスト。

フィンランド人のアンネをホストすることで、仏教を英語で学び始めました。
そこから人間関係が次々とつながっていき、アンネと一緒に広島のお寺を訪ねました。
若きご住職の石橋さんは毎月2回のペースで上京されて、寺カフェ代官山の活動をなさっています。
仏教を身近なものにするためにお寺が運営しているカフェが1階にあり、同じビルの13階ではさまざまな講座が開かれています。

石橋さんにいただいた講座案内で「入棺体験」という文字がすぐに目に入ってきました。
お棺に入ることで死を疑似体験し、生を見直すのが目的です。
月1回の開催ですが、翌週の枠にまだ余裕があるということでその場で申し込みました。

平日の午後1時からという時間帯のせいか、参加者は女性ばかり6人。
使用するお棺は、エコフィンという紙製の環境に優しいお棺です。

仏教では生まれた瞬間に死に向かうと考えます。
仏教英語講座のケネス田中先生がよくジョーク交じりでおっしゃいます。
「死なない方法が一つあります。生まれてこないこと。皆さんはもう手遅れですね」

実際にお棺に入る時間は1人3分。
閉所恐怖症で耐えられなくなったら、途中で出ることもできます。
「どうやって入ればいいでしょうか?」と質問する人がいましたが、実際は自分では入りませんから、入棺の作法なんてありません。

全員が体験した後、感想をシェアします。
「真っ暗で何も見えないから、耳の感覚が研ぎ澄まされる」
「明日死ぬかもしれないと思うと涙がでてきた」
「断捨離に意欲的になった」
「生まれる前、お母さんのお腹の中はこんな感じだったのかも。死はそこに戻ること」

私はお棺の中を広く感じました。真っ暗で何も見えないから、無限の広がりがあるように錯覚したのです。
他の皆さんの話声が聞こえるので、怖い思いはありません。
どなたかが「お通夜の時は参列者がこうして話しているのを上から見おろしている感じかも」とおっしゃっていましたが、棺の中に横たわり外にいる人の気配を感じるのはとても不思議な感覚です。
時間が来たら棺の外に出て、再び生者の仲間に入ると思うことで、生きていることを強く実感しました。

講座で使わせていただいたお棺は、僧侶の山口依乗さんの私物です。
「自分が旅立つ時は、このお棺で死を体験した人の思いと一緒に逝きたい」とのこと。

人は必ず死ぬと頭でわかっていても、心まで落とし込むことはむずかしいもの。いつまでも終わりのない日常が続くように錯覚しがちです。
生きているうちにお棺に入ってみるのは、とてもいい体験だと思います。