翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

『赤毛のアンの秘密』を読む

前回のエントリーで、モンゴメリの文章が修飾語の洪水であるという「ストーリー・ガール」訳者あとがきを知ったのは、この本に紹介されていたからです。

いろいろとショッキングなことが書かれています。

まず、アメリカ人は『赤毛のアン』をほとんど知らないということ。
その理由として「アメリカでは人はアイデンティティを持たないと生きて胃はいけない。しかし『赤毛のアン』にはそのテーマがない」、「アンとギルバートの恋愛など、アメリカ女性にとって起伏も刺激も不足していて、アピールするものなど何もない」と説明されています。

そして、作者のモンゴメリは私生活上のトラブルに悩まされ続け、最期は自殺だったらしいと書かれています。
モンゴメリの苦労の多い人生を知るプリンスエドワード島の人々にとっては、ロマンチックなイメージを求めて島を訪れ、中には結婚式を挙げようとする日本人のアン・フリークが少々奇異に映っているそうです。

なぜ『赤毛のアン』は日本女性に熱烈に受け入れられているのか。

アンは学業優秀で、英語学と英文学で最高の成績を収めた生徒に与えられる奨学金を受けることとなります。
マシュウとマリラは農業の手伝いのため男の子の孤児を引き取ろうとして手違いでアンがやって来たわけですが、最終的にマシュウには「十二人の男の子よりもお前一人のほうがいいよ、奨学金をとったのは、男の子じゃなくて、女の子ではなかったかな?」とまで言わしめます。
赤毛のアン』には続編があり、アンは大学も優秀な成績で卒業し、サマーサイド校の校長という要職に就いたものの、結婚によってキャリアを放棄。医師の妻として専業主婦となり、7人(1人は生まれてすぐ逝去)の母親となります。

小倉千加子は、少々シニカルにこう書いています。

「学校」で一番の少女が、結婚までは「自立」を目指して努力し、そのあとに「自発的に」結婚制度の中に入るという意味において、つまりは最終的には保守的な人生に回帰するなら、それまでは最も活発で、努力しさえすれば夢が叶うと信じ込ませる「読み物」を普及させることほど、質の高い家庭労働力を作る有効な手段はない。

想像力過多でたまに癇癪も起こす少女だったアンが続編では完璧な妻となり、母親となっていくことに少し違和感はあるものの、ストーリーテラーとしてのモンゴメリはなかなかのものです。

文章を書くことを仕事にしているけれど、文学的野心とは無縁で、編集者の注文通りに書き上げることを目標とし、
結婚はしたけれど、子供は持たず、
占いを学んだけれど、鑑定よりも開運記事などを書くことに活用しているという、すべてに中途半端で変化球を好む私にとっては、アンの物語はどれも楽しく読めます。


花子とアン』ゆかりの山梨県にある清泉寮。アメリカ人のポール・ラッシュによって創設されたキリスト教の研修施設です。