翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

ストライクゾーンを忘れよ

夢や目標を持つのはいいけれど、イメージを限定すると、かえって実現しにくくなるというのが前回の「不妊治療取材で学んだこと」というお話。

『28Days』というアメリカ映画に、とてもうまいたとえで同じことが説かれていました。
日本では劇場未公開ですが、レンタルショップでDVDを借りることができます。

28日間というのは、依存症患者が厚生施設で行う28日間リハビリのこと。
主人公はニューヨークでコラムニストをしているグエンという女性。サンドラ・ブロックが演じています。
暑くなると、つい水替わりにビールを飲んでしまうので、自戒のために観ました。

28 DAYS CE [DVD]

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厚生施設の患者仲間にエディという野球選手がいます。
彼が森の中で投球練習をしているところに出くわしたグエン。。
木に立てかけられた古いマットレスには、ストライクゾーンが描かれています。

グエンも試しに投げてみるのですが、素人ですし、大きく外れます。
「何をやっても私はダメなんだ」と自嘲するグエンに、エディはこんな話をします。

「投げる時に何を思った? マットに当てようと思っただろう? 
嘘だと思うだろうが、それじゃダメなんだ、全然」

意外な話の展開に、少しふてくされていたグエンも耳を傾けます。

「ストライクゾーンにとらわれ過ぎると、ピーナッツぐらいの点にしか見えなくなる。
『無理だ、とても当てられない』と、心理的にダメになる」

阪神タイガースの試合を見るたびに、ストライクゾーンめがけてあんなに速い球を投げるのは神業だと思います。

しかも、森の中の投球練習とは違い、本番の試合では、多くの観客に凝視され、テレビ放映もされます。
カウントがピッチャーに不利だったり、走者を出していたり、次に点を取られたら逆転されるなど、どうしてもストライクを取らなくてはいけない状況の連続です。
場合によっては、シリーズの優勝ひいては翌年の年棒がかかっていることもあるでしょう。

そんなプレッシャーの中でどうやって、ストライクゾーンに投げるのか。

エディはこう話を続けます。
「ストライクゾーン、審判、カウント、そしてバッター。すべて忘れるんだ。
そして、小さなことだけを考えるんだ。自分でコントロールできることだけを。
姿勢、バランス、球のリリース、腕の振り下ろし方。
そういった、コントロールできる小さなことだけを考えればいい。
なぜなら、一度、ボールを離したら、そこまでだから。
もう自分には何もできない。後は天に任せるしかない」

すばらしい。
ここまでわかっている野球選手なのに依存症になってしまうのが解せませんが、野球の試合以外にも人生には困難なことがたくさんあります。

たとえば、誰かを好きになったとき。
相手にも自分を好きになってもらいたい。そう願うのはストライクゾーンを狙うようなもの。
他人を変えることより、自分を変えるほうが簡単です。
だから、自分でコントロールできることだけを考えます。
相手に対する姿勢、話す内容、メールの文面。
それで好きになってもらえたら幸運だし、そうならなければ、それでしかたがない。
ひとたびボールが手を離れたら、後は何もできないのですから。

こう考えられるようになると、人生はぐっと楽になります。
恋愛だと感情の起伏が激しすぎてむずかしいなら、仕事でもいいし、毎日のちょっとしたことにも応用できます。


複雑なグラデーションの薔薇。水やりや肥料など人間がコントロールできることもありますが、最終的には天に任せるしかない部分もあるのでは。そこが植物を育てるおもしろさではないでしょうか。