翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

坊主バーの魚座的世界

自由奔放な射手座から、着実に結果を出す山羊座、斬新なスタイルで社会を改革する水瓶座、そしてすべてを融合する神秘的な魚座。この4星座のうち、水瓶座をテーマにしたのが前回でしたが、先日、まさに魚座的な体験をしたのです。

場所は四谷の坊主バー。
もともとは島根県・川本町滞在の打ち合わせで優春翠とアンネを引き合わせる日でした。
ところがアンネが、「その日は坊主バーに行けるといいんだけど」と言い出します。

アンネはフィンランドで坊主バーを紹介するテレビ番組を観て、深く興味を抱き、ぜひ取材したいと思っていたのです。
そして坊主バーに関する英文記事を書いた大來尚順さんと知り合い、大來さんがお友達と坊主バーに行くというのです。

一方、優春翠の実家の島根県川本町は仏教浄土真宗)の教えが深く根付いています。
とりわけ私が感心したのは、折に触れて僧侶による説教をしっかりと聞いていること。優春翠によれば、僧侶の評価は説教のうまさに左右されるそうです。

私の実家は真言宗なのですが、お経は呪文のようだし梵字はまったく読めず、お葬式や法事はまったくの儀式としてやり過ごしてきました。
岡山の田舎のお墓を神戸に移すことになったのですが、信心のかけらもない父は「イスラムスンニ派に改宗する」とうそぶき、面倒なことを子供に押し付けてきました。
西洋かぶれの私はミッション系の大学に進み、キリスト教学は必修科目だったので受講しましたが、仏教の教えに触れるようになったのは仏教伝道協会のケネス田中先生の仏教英語講座が初めてです。

子供のころから仏教の教えに親しんできた優春翠は坊主バーにも興味を抱き、アンネと大來さん、そして大來さんのご友人の石橋晃倫さんの5人で飲むことになったのです。

大來さんと石橋さんは見た目もさわやかな好青年。口調も礼儀正しく、とても穏やかです。
それもそのはず、二人とも十何代続く古いお寺の跡取りです。

「え! ごいんげさんなんですか!!!」と驚愕する優春翠。
山陰地方では僧侶のことを「ご院家さん」と呼ぶそうです。
川本町では、ご院家さんは尊敬の対象で、いきなり差し向かいで飲んでいるという状況に彼女はびっくりしたのでしょう。

そして、さらに驚くべきことが。
石橋さんのお寺は広島とお聞きして、広島のどこかと尋ねると、島根寄りの広島で川本町のご近所。石橋さんも川本町のことはよく知っていました。

そんなことを話しているかたわらで、アンネは取材を敢行。大來さんが通訳しています。
仏教なのに酒場なんてけしからん、と批判されることもありますが、日本人はお酒を飲まないと心の内側を語らない人も多いのです。真剣に話をしたい人のために、バーとは別に場所も用意しています」みたいな話が聞こえてきます。

取材を終えたアンネと大來さんを交えて坊主バー名物のカクテルを注文。
「極楽浄土」「無間地獄」「愛欲地獄」など5種類のカクテルを5人で味見しながら飲みました。
東京にいながらにして、島根や広島、山口(大來さんのお寺)、そしてアンネの住むフィンランドのセイナヨキがぐるぐると回っていきます。
仏教キリスト教イスラム教、そして聖と俗の境界もなくなったかのような瞬間でした。

これこそ魚座的世界。
魚座は12星座最後のサインですから、境界をなくした神秘的世界を司ります。
魚座に到達するまでの11星座すべての要素も併せ持つので、あいまいで流動的です。
お酒が魚座で象徴されるのは、理性の枠をはずすからです。「ま、いいじゃん、一杯飲もう」と緊張関係をほぐし、飲んでいるうちに心がどんどん広がってきて、小さなことはどうでもよくなります。
酒を飲んで怒りっぽくなったり、やたらとからむのは、魚座的な飲み方ではありません。

私にとってお酒は魚座的世界に入るための最も手軽な手段。
翌朝の二日酔いさえなければ最高です。


坊主バーは四谷3丁目、荒木町の飲み屋街の奥にあります。