翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

神経症の白クマ

動物園は、楽しそうでいて、残酷な場所です。

旭山動物園では、動物たちが餌を食べるところを見学できます。水中に投げられた魚を泳ぎながらキャッチする白クマは見ているだけで楽しくなります。
そんな華麗なショータイムを演じる白クマもいる一方で、同じ場所をぐるぐる回って同じ動作を繰り返す白クマを見ました。

シーナ・アイエンガーの『選択の科学』の一節を思い出しました。

これ以上はないというほど贅沢なホテルを想像してほしい。朝昼晩と豪華な食事が用意されている。日中はお好きなようにどうぞ。プールサイドのラウンジで過ごすもよし、美容施術を受けるもよし、娯楽室で遊びに興じるもよし。夜にはキングサイズのベッドで、羽枕と織り密度の高い柔らかなシーツにくるまれて、眠りをむさぼる。にこやかなスタッフがいつも控えていてどんな要望にも喜んで応えてくれる。その上、ホテルでは最先端の医療サービスが受けられる。
<中略>
そして何といっても最高なのは、すべて無料だということだ。だが一つだけ、ちょっとした条件がある。チェックインしたが最後、永久に出られない。

選択の科学

選択の科学

これは、動物たちにとっての動物園のことです。
動物園の動物は、エサを探したり、捕食動物から身を守る心配もありません。生きていくのに必要なものは、ほとんどすべて与えられます。
一見、そう悪くない話ですが、「状況を自分でコントロールできない」という状況は強いストレスを引き起こします。
シマウマは、近くのライオンや虎のにおいを感じながら、逃げることもできません。毎日、食料は与えられますが、明日もまた与えられるかどうかを知るすべもなく、自分で食料を調達することもできません。

そのため、多くの動物が脱走を企てたり、自己破壊的な行動に走ります。そして、動物園の動物は野生にいるより生活条件が良好なのにも関わらず寿命は短く、出生数も少なくなります。

ニューヨークのセントラルパーク動物園の白クマは神経症のため、プールを延々と往復してひたすら泳ぎ続けました。旭山動物園の白クマも同じなんでしょう。

私たち人間は、動物園の動物じゃなくて、自由に生きています。チェックアウトできないホテルにいるわけではありません。

しかし、自由な環境にありながらも、習慣の奴隷となって、状況をコントロールできないことがよくあります。

「体重を少し落としたいから、食事をセーブしよう」と思っていても、午後3時頃になると、お茶を淹れてお菓子を食べたくなります。
「今日は休肝日にしよう」と思っていても、日が暮れると缶ビールを開けてしまいます。
あるいは、原稿を書くためにパソコンを立ち上げても、ついネットを閲覧して時間が過ぎてしまうことも。

「状況をコントロールできていない」という点では、同じ場所をぐるぐる回っている白クマと変わりません。
「自分の人生は自分でコントロールする」と、しっかり自覚しなくてはいけません。

アイエンガー教授からのアドバイス

飼育動物とは違い、人間の自己決定権や無力感のとらえ方は、外部の力だけで決まるわけではない。人間は、世界に対する見方を変えることで、選択を生み出す能力を持っているのだ。
<中略>
たとえ状況が自分の手に負えないように思えても、自分の力で何とかするという気持ちを持つことで、より健康で幸せな日々を送ることはできる。

「選択の科学」には深い感銘を受け、折に触れて読み返しています。

占い師必見講義「選択の科学」
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20111204/1322959417

マシュマロ実験
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20111228

「選択の科学」に登場する占い師
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20120809/1344481307


同じ場所をぐるぐる回る神経症の白クマ。