翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

カフェ・モスクワ 二夜

ヘルシンキにあるカフェ・モスクワは、カウリスマキ兄弟の経営するバーです。

カウリスマキ映画をすべて観ているという村上春樹はカフェ・モスクワまで出向いたものの、ビールを飲めなかったという悲惨な目にあってます。
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20130711/1373499289

カウリスマキの『浮き雲』をきっかけにフィンランド好きになった私は、ヘルシンキ到着の第一夜、カフェ・モスクワへ。
時差調整のため、初日だけはカウチサーフィンではなく、ヘルシンキ中央駅のホテルの宿を取りました。
ヘルシンキは安全な街で、夜間に旅行者が一人で出歩いても平気です。

ちゃんと店員さんがいて、カウンターでビールを一杯。
前の旅行で訪れた時は、あまりお客さんがいなかったのに、この日は団体さんがどやどやと入ってきました。
40代ぐらいの男女のグループで、20人ぐらいだったでしょうか。そう広くない店内はいっぱいになりました。
そのうち、プリントが配られ、寸劇のようなものが始まりました。

グループに属していない客は私だけ。寸劇の内容もフィンランド語だからまったくわかりません。
完全なアウェイ状態。
これがアイリッシュ・パブなら、話好きな誰かが声をかけてくるはずですが、基本的にシャイな国民性のフィンランド人は、やたらと外国人に話しかけたりしません。
意を決して「みなさん、どういうグループなんですか?」とカウンターでとなりに座っているフィンランド人に聞いてみました。
フィンランド語の先生の集まりだそうです。
答えは返ってきましたが、それっきり会話が発展することもなく、私はビールを飲み干してそそくさと席を立ちました。

「これから2週間の一人旅、はたして大丈夫なのか」と気が滅入った初日でしたが、翌日はエリカ一家で大歓迎され、そんな不安は吹っ飛びました。
カウチサーフィンのおかげで残りの日々は、フィンランドの友人たちと楽しく過ごせました。
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20130915/1379243577

9月の旅から3ヶ月後、再びカフェ・モスクワへ。
今度は吉祥寺のハモニカ横丁です。
カウリスマキの店から名前を借りていますが、共通点は壁が赤いところぐらい。
フードメニューも充実し、1回は立ち飲みで、2階にはテーブル席もあります。

そしてヘルシンキのカフェ・モスクワとは違い、一緒に飲む人がいます。
お互いのブログを通して知り合ったカジケンさん。
http://kajikenblog.com/

年齢も仕事もまったく違うのですが、接点は「ネットを通したつながり方」に興味があること。
最初に会ったのはフィンランドを旅する前の8月で、初対面ということもあり、アルコール抜きで会話しました。
今回は二度目なので、吉祥寺のカフェ・モスクワでビールを飲むことになったのです。

ブログを読んでいるので、話したいことが山のようにあります。
酔ってわけがわからなくならないように、テーマをメモしていきました。
メモは手書き、携帯はいまだにガラケーの私がIT最前線にいる人と同じテーブルで話すという不思議。

カジケンさんが「ムーアの法則」を教えてくれました。

インテルの創設者のひとりであるゴードン・ムーア博士が提唱したもので「半導体の集積密度は18〜24ヶ月で倍増する」という法則。
つまりコンピュータは1年半か2年ごとに2倍の性能になるということでしょうか。
あまりの加速度に、頭がくらくらしましたが、ハイテク機器の原理や細かいスペックはわからなくても、これまで接点を持ちようのなかった人とつながれるというメリットは享受できるありがたい世の中です。

こういう体験をするたびに、星新一のSFショートショート『ナンバー・クラブ』を思い出します。

星新一が「ナンバー・クラブ」で予言した未来
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20130331/1364738349


ヘルシンキのレストラン、Zetor。デザインはレニングラードカウボーイズのサッケ・ヤルヴェンパーで、店内にはトラクターが鎮座しています。こことカフェ・モスクワ、トータル・バラライカ・ショーが開かれた大聖堂の前の広場が、私にとってのヘルシンキ三大聖地です。