フィンランド人のヨルマをホストしたのは、彼がハーメンリンナに住んでいるから。
村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』では、多崎つくるは高校時代の友人・クロに会うためにハーメリンナに向かいます。クロはフィンランド人男性と結婚して、夏の間はハーメンリンナに住んでいるという設定です。
私がハーメンリンナに行く9月初め、ヨルマはオーストラリアを旅行中なので、ヴィッレという友人を紹介してくれました。
ヨルマが来た日、阪神タイガースの試合が気になって中継をちらっと見ていたら「ヴィッレも野球をやる」と言います。
「フィンランド式野球のことでしょう?」と私。
フィンランドには「ペサッパロ」という野球に似たスポーツがあります。アメリカで野球を見たフィンランド人が自国用に作ったものです。
しかし、ヴィッレがプレーしているのは本当の野球だとヨルマは言います。
なぜならヴィッレは日本生まれ、日本育ちだから。そして、日本語を使う機会がないことを嘆いているので、私と会うことをとても喜ぶだろうと。
フェイスブックのヴィッレのプロフィール写真は、ヘルメットをかぶりバットを構えるユニフォーム姿。まるでメジャーリーガーみたい!
「僕は折り紙で日本に知られているけれど、ヴィッレはホームランで有名だ」とヨルマ。
早速、メールを出してみました。
すると「日本語でも大丈夫」と返信。読み書きなら、むずかしい単語や漢字もネットのツールを使ってなんとかなるそうです。話すほうは、会話の機会がないので能力が落ちているといいます。
私がハーメンリンナに行く日を伝えると、仕事を早めに切り上げて2時か3時に会ってくれることになりました。フィンランド人は、無駄な会議などをなくし、効率的に働くのです。
森でベリーを摘んだり(いかにもフィンランド!)、子供たちの世話もするイクメンでもあります。
「ハーメンリンナで何をしたいか、教えてください」と申し出てくれたので、子供たちと一緒にアイスクリームを食べようと提案しました。
村上春樹の小説では、多崎つくるがアポなしでクロの家を訪れ、フィンランド人の夫は久しぶりに会った二人がゆっくり話せるように、子供たちを連れてアイスクリームを食べに外出するシーンがあるのです。
「イタリアほどおいしくないけれど」とヴィッレはいいますが、一緒にアイスクリームを食べるのが本当に楽しみです。