翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

カーストから抜け出した後、何をするか

アン姉さんはフィンランドの恵まれた休暇制度を活用し、毎年4週間から6週間の旅に出て、2年前には1年間かけて世界一周をしました。新聞記者という枠におさまらず、さまざまな経験を積んでいるのです。

このところ日本では、原稿書きでは食べていけないとささやかれるようになりました。フリーランスではなく、ちゃんと組織に勤めていても、いつまで安泰でしょうか。
「ジャーナリストが職業として成立しなくなるかもという危機感は、もちろんフィンランドだって同じ」とアン姉さん。
「だから、長期休暇を利用して、写真を学んだり、農場のボランティアステイをするなど、自分の可能性を増やしている」

その話を聞いて、思い出したのが宗教人類学者の植島啓司先生の本です。

生きるチカラ (集英社新書)

生きるチカラ (集英社新書)

大学教授にしてギャンブラー、毎晩のように女の子たちと飲んで遊び、世界を旅する植島先生。
「人間はまったく異なる二つの側面を持たねばならぬ」が、彼のポリシーの一つです。日本で正社員になってしまうと、なかなかむずかしいことですが、世界には、さまざまな顔を持って暮らしている人がいるのです。

植島先生が例として挙げているのが、バリ島の人々。
朝は農民として働き、昼は木陰で休み、賭けごとに興じる。夜になり祭りが始まると、お坊さんになったり、ガムランを演奏したり、トランスに入ってダンスを踊る。
一人の人間が一日のうちに、さまざまな存在になれるそうです。

いわゆる西欧や日本の人々が限界を感じているのは、そういう意味での豊かさからどんどん遠ざかっている点であり、そうしたことはお金では得られないのである。

日本のように学校や会社、ママ友仲間など帰属する場所が限られていると、そこでうまくいかないと、自分の居場所がなくなってしまいます。
植島先生はその典型が「いじめ」であり、複数の帰属先を持つことが解決につながるのではないかと提案しています。

ホリエモンによると、「刑務所内でもカーストができる」そうです。
スクールカーストができるのは、閉じ込められた狭い環境にいるから。自由に行き来できる環境なら、カーストなんかできないし、できてもすぐ解消するとホリエモン西村博之氏との対談で説明していました。社長以外、社会人をやったことのないホリエモンは、刑務所で人生初の上司を持ったそうです。

ホリエモンは無事に娑婆に出てこれたから、こうして笑い話にできるのでしょうけど、実際にその場から出られない期間は苦しいでしょう。特に、うまくたちまわれない不器用な人にとっては。

学校なら決められた期間で卒業できるし、ママ友だって、子供が小さいうちだけ。そう割り切ってカーストの掟に従って生きるしかありません。
重要なのは、その期間が終わった後です。カーストから自由になったら、あなたは何がやりたいですか? そしてあなたが持っている人に負けないものは?

フリーランスのライターはカーストと無縁のようですが、昔は「店取材ライターは最下層」という言葉がありました。
この場合の店とは、飲食店です。今やネットの口コミサイトによって、雑誌のグルメページは駆逐されつつありますが、かつては駆け出しのライターが一日にラーメン店やカレー店を数件取材で回っていたのです。
お店が取材を受けるのは、ランチタイム後から仕込みが始まる夕方まで。人気メニューを作ってもらい、カメラマンが撮影し、試食。住所や電話番号、開店時間、休業日の確認。とにかく時間がないので、大急ぎで仕事を進めます。
全部食べなくてもいいといっても、大量に残すのは作ってくれた人に悪くて、無理して食べていたら、帰りの電車で胃が痛くなり、冷や汗が出たこともあります。

若くて体力のあるうちしかできない仕事です。時間と手間を取る割に効率も悪いし。
占い学校に通い始めたのは、ライターの最下層から抜け出したいという危機感もあったからです。

今、不本意な状況に置かれていたとしても、それがずっと続くわけではありません。
でも、自分が何も持っていなければ、その状況にとどまるしかありません。
「これなら、誰にも負けない」「好きでたまらない」というものを見つけましょう。収入に結び付くのに時間がかかったとしても、人生はぐっと豊かなものになります。