翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

あなたには、もっと合う人が見つかるはずだから

今年の2月から本格的にカウチサーフィンを始め、このブログは占い師の日記というよりカウチサーフィン体験記となっています。
外国人旅行者を自宅に泊めるのですから、けっこう濃い体験です。やり方によっては、日本人だけの団体で海外の観光名所を巡るパックツアーよりも異文化体験ができるのではないでしょうか。

これまで泊めたのは6人で、そのうち4人がフィンランド人。スザンヌはドイツ人ですが、ヘルシンキ在住です。ケネスが唯一のアメリカ人。
旅人からリクエストが届いたら、その文面だけでなくプロフィールを入念にチェックします。英文読解力アップの格好の機会です。
コピペのリクエスト、空欄が多いプロフィール、自分はホストせずに人の家に泊まってばかりいるサーファーはパス。これでかなり候補者が絞られます。

「リクエストやプロフィールは手抜きだったけれど、会ってみるとすばらしい人だった」という体験もあるでしょうが、原稿書きを生業としている私としては、ホストをお願いする相手に対し、自分がどういう人間かを文章で伝える手間を怠る人と気が合うとは思いません。
自宅に泊めてちっともおもしろくなかったり、不快な思いをするリスクと、すばらしい人と出会うチャンスを逃すリスクを天秤にかけると、前者のほうが大きいのです。

プロフィールには、これまでホスト・サーフした相手からの評価も書きこまれます。ほとんどがポジティブですが、これは披露宴のスピーチのようなもの。「楽しかった」「親切」「いい人」といった一般的な形容は割り引いて考える必要があります。何が楽しかったのか、どんな親切をしてもらったのかが書き込まれている評価を参考にします。
そして、私がゲストの評価を書く時も、具体的なエピソードを書くように心がけています。「ユハナ君は、ヨレ・マルヤランタのフィンランド語の歌詞の解説をしてくれた」といった具合。

翻訳家のユハナ君からは、リクエストをもらったわけではありません。
我が家で開いた持ち寄りパーティのゲストでした。翌日、彼のプロフィールを読んで、あまりのおもしろさに「東京に戻ったら、うちにサーフしませんか?」と逆リクエストを送ったのです。彼をホストした3日間、好きな作家に会っているかのような楽しさでした。
スザンヌとケネスは実際に会う前に何度もメールを交換し、実際に会った時は旧知の間柄みたいに感じました。

マイヤちゃんはメールこそ素っ気なかったのですが、リクエストやプロフィールはしっかりと書き込まれていました。
改めて読み返してみると、彼女のイメージがいきいきとよみがえってきます。

I'm shy and it takes time to really know me. After a while you may realize that I'm a humorous, friendly and somewhat crazy person and if you (are) like that, I like you back.
私はシャイなので、本当の私を知ってもらうには時間がかかる。しばらくすれば、私がユーモラスでフレンドリーで、どこかクレージーな人間だとわかるかもしれない。もしあなたもそうなら、私もあなたが好きになる。

ええ、まさにその通りでした!
「こんなに、か弱そうできれいな女の子が4週間も一人旅をするなんて大丈夫なんだろうか」というのが第一印象でしたが、芯が強く、自分の考えをしっかり持った女性でした。

9歳で動物愛護精神に目覚めて以来、ベジタリアンに。卵や乳製品も食べないビーガンの食生活を心がけています。
初めて食べる納豆もきれいに完食しました。一緒にスーパーに買い物に行って、彼女が自分で買ったのです。私は納豆を食べられないので「かなりのチャレンジかも」と言ったのですが、彼女は「ヘルシンキではナットーは手に入らないし、とても栄養があると読んだから」と自分のカゴに入れました。


我が家のベランダから新宿の高層ビル街が見えるのですが、マイヤちゃんは歩いて行くと言いだしました。
「かなりの距離があるから歩くのは大変。電車なら10分もかからない」とアドバイスしたのですが、
「歩くからこそ、見えてくるものがある。目的地まで急いで到達するのが旅じゃない」と哲学者のような言葉を残し、出発しました。
1時間20分かけて新宿まで歩き通したそうです。災害で電車が止まった時のための有益な情報が得られました。

友達となった今ではマイヤちゃんから、親密なメールが届きます。
ヘルシンキ行きのチケットはもう買った?」としょっちゅう聞かれるので、そろそろ旅の準備をしないといけません。
こんなにかわいくてユニークな女の子を育てたお母さんにも興味があります。私はお母さんの世代に近いし、村上春樹とジャズが好きだというし。そう伝えると、お母さんにも会わせてくれることになりました。

そして、マイヤちゃんのヘルシンキのカウチ情報にはこう書かれています。

I don't want in my home is meat. As I've told before, I'm very strictly vegetarian and the smell of meat is disgusting. If you don't understand this or find this ridiculous, please don't contact me. You'll surely find more matching host for yourself.
私は我が家に肉を持ち込んでほしくない。プロフィールでも触れた通り、私は厳格なベジタリアンで肉の匂いを嗅いだだけで気持ちが悪くなる。もしあなたがこれを理解しなかったり、ばかばかしいと思うなら、私に連絡しないでください。あなたには、もっと合ったホストが見つかるはずだから。

一生のうちに出会える人には限りがあります。
やみくもに出会おうとするのではなく、自分に合った人といかに出会うかが重要です。
気に食わない人を切り捨てるという意味ではなく、マイヤちゃんに習って、その人には、あなたよりもっと合う人がいると考えてはどうでしょうか。

マイヤちゃんは高校を卒業し、家具作りを学び、現在はヘルシンキで会社務め。学びたいことが見つかったら、大学に行くそうです。フィンランドでは大学の授業料が無料なだけでなく、生活費も支給されます。高校卒業後、数年間は社会勉強をしてから大学に入るのが一般的だとか。そして何年かけて卒業するかも人それぞれです。

それにしても、高卒でこの英語力。
「カウチサーフィンのプロフィールを見ていると、日本人は高学歴の人が多いのね。気おくれしてしまう」とマイヤちゃんはつぶやいていましたが、日本の大卒の英語力を知り、どう思ったのでしょうか…。

マイヤちゃんのはじめてのおつかい
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20130414/1365901227

マイヤちゃん、福島の猫に会う
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20130509/1368059144


大国主命因幡の白兎。動物好きのマイヤちゃんは子供時代に兎を飼っていました。