翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

カウチサーフィンとマジックテープの法則

カウチサーフィンをやっていると話すと、「無料で外国人旅行者を泊めるの!?」とよく驚かれますが、お金をもらわないからこそ、ゲストを選べるのがカウチサーフィンのいいところだと私は思っています。

空いている部屋を旅行者に貸し出すair bnb(エア・ビーアンドビー)がありますが、カウチサーフィンに似ているようでいて、お金が介在しますからまったく別物です。

「より良い地球を創るために、1カウチの貢献を」というのがカウチサーフィンの理念。
海外からの旅行者をホストすることで異文化を理解し、寛容な精神を培うという狙いがあるのでしょうが、現実には人気投票みたいな残酷な面もあります。わざわざ自宅に泊めるなら、一緒にいて楽しい魅力的な旅人を選びたいのが人情でしょう。

「誰でもオープンに受け入れるのがカウチサーフィンだ」と、スケジュールが空いている限り旅行者を泊めている人もいるようですが、人それぞれ自分のスタイルでカウチサーフィンを楽しめばいいと思います。

初期のカウチサーフィンでは、誰を泊めても有意義な時間が持てたそうですが、最近は「どこでもいいから無料で泊まりたい」という節約目的で登録する人も増えてきました。昔からカウチサーフィンをやっていたけれど、こうした風潮を嘆いたり嫌気がさしてホストするのを止めている人もいるそうです。

ホストが旅人を選ぶのと同様に、旅人もどこに泊まるかを選べます。

カウチリクエストを受けるか受けないかは完全に個人の判断に委ねられているし、タイミングにも左右されるので、ホストが見つからない旅行者も多いのです。特に東京は、日本人はシャイで外国人をなかなか受け入れないし住宅事情も悪いから、ホストを見つけるのは苦労するといわれています。

その一方で、バックパッカー用のホステルなら東京でも3000円ぐらいで泊まれるし、物珍しさからカプセルホテルに泊まりたいという外国人旅行者もいます。気むずかしいホストの家で窮屈な思いをするくらいなら、安宿に泊まるほうがずっといいはずです。

フィンランドから来た26歳のマイヤちゃんのような若くてかわいい女の子なら、簡単にホストが見つかります。

4月の上旬に我が家に2泊して、翌週は京都へ。東京に戻るならまたホストしたいと思いましたが、カウチサーファーは自由を好み、先の予定まできっちり決めるのを嫌うようですから、敢えて何も言いませんでした。
マイヤちゃんから「東京に戻った」と連絡があり、「泊まるところが必要なら、うちはいつでも大歓迎」と返信すると、東京でのホストはすべて決まったとのこと。

マイヤちゃんは、最初は少し人見知りするタイプですが、会話を重ねるうちに、芯が強くて聡明な女の子だとわかりました。メールの文面は素っ気ないほど短いのですが、カウチサーフィンのプロフィールはしっかりと自己紹介の英文を書いています。
京都ではたくさんの人と知り合って楽しく過ごし、中には彼女に再会するためにわざわざ東京まで来た人もいるそうです。
マイヤちゃんと再会できたのは、彼女のほうから「連休は忙しいの? 私と会う時間はない?」と言ってきたからです。
別れ際には「フィンランド行のエアチケットはもう予約した? 次はきっとヘルシンキで会えるよね」とマイヤちゃん。こんな女の子が待っていてくれるのなら、絶対ヘルシンキに行きたくなります。

アメリカのスピリチュアリスト、アラン・コーエンが説く「マジックテープの法則」は、同じバイブレーションを持つ人同士が結びつくというもの。
愚痴や怒りばかりを口にして自分は不幸だと思い込んでいる人に、満ち足りた人生を送っている人は近づいてきません。だから、人を変えようとするのではなく、自分が望ましいバイブレーションを保つようにしましょうという教えです。

現実の人生は、マジックテープの法則だけでは説明しきれないことも起こります。「あんなにいい人が、ひどい目に遭うなんて…」というケースです。
でも、カウチサーフィンは旅人とホストがお互いに選びあうのですから、マジックテープの法則が発動しやすい関係です。
私は「この人なら会ってみたい」と思う旅人しか受け入れないし、旅人にも「この人にホストされてよかった」と感じてもらいたいのです。それは家が広いとか、家庭料理をご馳走したからでなく、人間的な魅力というかおもしろさです。

ホストした旅人との別れのたびに名残惜しくてたまらず、寂しくなります。
カウチサーフィンをするには情が濃すぎるのかもしれませんが、別れがつらくなく、旅立ってくれてせいせいすると感じるような旅人は受け入れたくないのです。