翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

1週間で1冊の本を書く

出版不況で、フリーランスのライターは仕事がなくヒマなのかといえば、そうでもなく、とんでもなく忙しくなったりします。

先週は超人的に働きました。
月曜から日曜までの7日間で書籍1冊を書きました。
といっても、私は著者ではなく、世間でいうゴーストライター、編集協力というものです。さすがに自分で発案して一から書くのでは1週間では無理です。
著者が書き溜めたテキストや音声、直接取材の2日間分のデータを元に1冊の本に仕上げていきます。

出版社のスケジュール事情なのか、「できるだけ早く」というオファーがあり、月曜からスタートして次の週明けを目標としました。

あまり厚くない本なら、約7万字で1冊となります。
これまでの経験からして、1日1万字が私の限界です。がんばればもっと書けるかもしれませんが、7日連続となると無理です。
A4のワードが40字詰で36行で1ページですから、1440字。1日7枚書けばいい計算です。
1日ごとのTO DO LISTにページ数の数字を書き、1ページごとに書き終わったら、スタンプを押して消していきます。ともかくスタンプを1個ずつ押すことを目標にして集中するのです。
書籍や雑誌の何十ページもの特集はこうやって書いてきました。

今回は月刊誌連載の翻訳の締切もあり、苦しい展開だったのですが、とにかく乗り切りました。

仕事がスタートする前の週末はカウチサーフィンのゲスト、スザンヌが2泊。
土曜日は空手道場に同行し、日曜の夜は近所のフィンランド好きのキョウコさんとパートナーのチェコ人のホンザをお招きしました。私は巻き寿司と豆腐のラザニア、スザンヌはマヨネーズを使わないドイツ本場のポテトサラダを作り、キョウコさんが持参した日本酒ですっかりいい気分に。
月曜の朝、東京駅発10時半の新幹線で栃木に向かうスザンヌを送り出しましたが、9時台のJR中央線はけっこう混雑します。大きなバックパッキングで大丈夫かなと思ったのですが、東京駅までついて行くのは過保護の母親のようだし、仕事は詰まっている…。
少し不安ながら玄関先で別れたのですが、なんと、出勤中のキョウコさんが駅でばったりスザンヌと会って、東京駅まで一緒に行ってくれたそうです。

「いつやるの? 今でしょ」の予備校の先生の言葉。
「仕事を選ぶな、仕事が僕を選んだのだから」
スザンヌはしっかりした女の子だし、何も心配することはない。
キョウコさんからメールをもらって、「自分のやるべき仕事に集中せよ、この仕事が私を選んだ」という神の啓示かと思いました。

腹をくくって、月曜から日曜まで一日10時間以上パソコンに向かう毎日。
こういう生活をずっと続けている売れっ子の作家やライターもいるのでしょうが、私は年に数回が限度です。

日曜の深夜に編集者にメールで原稿を送り、月曜は1日12時間、寝ました。
火曜日は取材が1件あった以外は、だらだら過ごしました。

時間は同じような密度で流れているのでなく、伸び縮みするゴムのようなものに感じられます。
アインシュタイン相対性理論を説明した有名な言葉。

When a man sits with a pretty girl for an hour, it seems like a minute.But let him sit on a hot stove for a minute - and it's longer than any hour.That's relativity.
かわいい女の子と一緒に1時間いると、1分しか経っていないように思える。
熱いストーブの上に1分間座っていると、どんな時間より長い。これが相対性だ。

どんな時間を長く感じるかは人それぞれでしょう。
時間管理のために、15分とか30分ごとに区切るというのは、私には無理です。一気に集中すべきなら、時間を忘れてエネルギーが続くまで没頭する。心理学者のミハエル・チクセントミハイのいう「フロー状態」です。

私の場合は締切から逆算してフロー状態のスイッチが強制的に入るわけですが、できれば、自分の好きなこと、やりたいことでフロー状態になれたら最高です。


ヘルシンキのアカデミア書店。映画「かもめ食堂」で、サチエが「ガッチャマンの歌、知りませんか?」とミドリに尋ねた場所です