海外の日本好きにはさまざまなタイプがありますが、武道(martial arts)をやっている人もけっこういます。
先日、カウチサーフィンで我が家に滞在したスザンヌも空手の黒帯です。
現在はヘルシンキ在住ですが、ドイツ出身で、お父さんが空手をやっていたことから、スザンヌも10歳で空手を始めたそうです。ヘルシンキでは子ども達に空手を指導しています。
日本に来るからには、ぜひ本場で空手の稽古を体験してみたいというのスザンヌの希望。
カウチサーフィンは、ホスト、ゲストとも独立した関係が基本で、スザンヌは絵に書いたような優等生ですから、自分の力で日本の空手道場とコンタクトを取ろうとしていました。
ところが、漢字だらけのサイトで立ち往生。それならと私が調べてみると、あちこちに見学・体験歓迎の空手教室があります。
「空手道場はたくさんあるから、なんとかなるよ」とスザンヌにメールすると、「流派によって型の違いがあるので、自分が習ってきたshotokanの道場じゃないとだめなの」とのこと。
こうして外国人に日本の空手について教えてもらうのも、カウチサーフィンの醍醐味です。shotokanは松濤館であることも判明しました。
幸い、近所に國際松濤館の空手道場がありました。
彼女は土曜と日曜、我が家に二泊することになっていて、ちょうどいいことに土曜日の夜に稽古があります。「見学・体験自由、電話予約不要」とあるので、二人で出かけてみました。
カウチサーフィンでは、宿泊を提供するだけで観光案内などをする必要はないのですが、ホスト側がおもしろそうだと感じたら、一緒に行動します。こんな機会でもないと、空手道場なんて行きませんからね。
そういえば昨年は同じくカウチサーフィンでイギリス人紳士をホストして、剣道大会を見に行きました。
http://d.hatena.ne.jp/bob0524/20120524/1337812525
スザンヌは「いきなり道場に行くのは、先生に失礼にならないだろうか」と少し心配していましたが、道場の方々はものすごく親切でした。
英語が堪能な方も多く、ポニーテールに黒帯のスザンヌは見た目もりりしく、稽古についていくのに何の苦労もありません。
道場には子ども達もいて、付き添いのお母さん方と一緒に見学しました。将来、国際社会で仕事をする機会があれば、空手をやっていることはユニークなアピールになります。習い事としては賢明な選択ではないでょうか。
海外で活躍するためにはまず英語、と考えがちですが、語学だけできてもしかたがないと私は思います。どう話すかも大切ですが、何を話すかが問われます。話す中身がなくては、英語ができても会話は続かないでしょう。
私の場合は、易や風水。
易経の六十四卦は、ウィルヘルムのドイツ語訳をさらに英訳したものを繰り返し読んでいます。
風水は西洋でもブームですし、八方位の意味ぐらいはすらすら説明できるようになりたいものです。
昔から西洋かぶれで、音楽や映画は英語のものばかり好んでいた私が、東洋占術を学ぶようになったのは奇妙な流れですが、今となっては、大正解だったと思います。
稽古の後、スザンヌにこんなことを言われました。
「カウチサーフィンについて、稽古仲間に説明してくれないかしら? 私とあなたが昔からの知り合いじゃなくて、今日初めて会ったと言ったら、信じてもらえなかったから」
たしかに、信じがたいことでしょう。口の悪い編集者から「外人の出会い系でもやってんの?」とも言われたこともあります。
出会いはネットを通したものですが、何度もメール交換を重ねていますし、スザンヌはヘルシンキ中を探し回ってヨレ・マルヤランタのCDをお土産に持ってきてくれました。現実に会った時点では、すでに親しい友人となっていたのです。
東京を起点に1ヶ月間、日本中を旅して、最後は空手のルーツである沖縄に行くというスザンヌ。
帰国は成田からというので、来月もう一度、うちに来てくれます。きっと刺激的なお土産話を聞かせてくれることでしょう。
國際松濤館空手道連盟中野道場の指導者の方々。左から3番目がスザンヌ。どなたも威厳がありつつ、とても親切。本当にお世話になりました。ありがとうございます。