翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

ギリシャに「黄金の夜明け」は訪れるのか?

2月10日朝日新聞の第一面「カオスの深遠」シリーズに、ギリシャで起こったある殺人事件が書かれていました。

2013年1月17日、アテネの下町で26歳のパキスタン移民が刺殺されました。
犯行時刻は午前3時すぎ。朝市に出勤する途中での惨事です。

週3日、オレンジを売る露店で早朝から夕方まで働いて日給は30ユーロ(約3750円)。住まいは4畳半ほどの窓のない部屋で、同郷の男性と一緒に暮らしていました。

容疑者2人が捕まり、彼らの自宅から見つかったのが、ギリシャで急速に勢力を広げる「黄金の夜明け」のパンフレットの束。
「外国人は出て行け」
「移民がギリシャ人の仕事を奪っている」
そんな排外的な主張で支持を集めている右翼政党です。

さらに記事を読み進めると、「黄金の夜明け支部では、貧しい人を助ける活動をしているとあります。トマトやズッキーニ、サバ、イカなどの食料品を無料で配ったり、主張に共鳴する医師による無料診察もあるそうです。もちろん対象はギリシャ人のみです。

深刻な債務危機が続き、未来にも希望が持てないと、「自分たちを苦しめている犯人」をどうしても探したくなるのでしょう。

タロットカードのウェイト・スミス版愛好者なら、この右翼政党が「黄金の夜明け」を名乗ることにショックを感じるはずです。
現在、世界に最も流布しているタロットカードであるウェイト・スミス版は、アーサー・ウェイトが女流画家のパメラ・コールマン・スミスに描かせたものです。
アーサー・ウェイトは、19世紀末のイギリスの魔術結社「黄金の夜明け団」に所属していました。

黄金の夜明け(the Golden Dawn)の"Dawn"という単語は、私にとって思い出のある単語です。
アメリカ人の友人(女性)のファーストネームがDawnでした。
あまり聞いたことのない名前だったので「ドーン?」と聞き返すと「夜明けという意味」と教えてくれました。
彼女が生まれた時刻は日の出。そして、家族中が待ちに待った最初の子どもで、「これで一家が明るくなる」と、Dawnと名付けられたそうです。
イタリア系の彼女の家は祖父母も同居する三世帯家族で、Dawnは両親と祖父母から、心底かわいがられていました。

幸せそうなDawnと、ウェイト・スミス版のミステリアスな絵柄。
黄金の夜明け団は、決して英国人だけの秘密結社ではありません。
ウェイト・スミス版の絵柄は、ユダヤ教神秘主義カバラギリシャやエジプトの神話、聖書、占星術錬金術などを結び付けた折衷的なものです。民族や国家の枠組みを超えた、人類に普遍の神秘思想を探求しているように見えます。

私にとってそんなイメージの「黄金の夜明け」が、ギリシャでは、過激な外国人排斥を訴える政党名になっているとは、残念でたまりません。


ウェイト・スミス版誕生100周年を記念して作られた復刻版。1900年代初頭にパメラ・コールマン・スミスが描いた淡い色彩が再現されています。