翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

大人のカウチサーフィン活用法

カウチサーフィン(CS)はボストンの大学生のアイデアによって生まれた旅行者の交流システムです。
利用者は18歳〜29歳が7割近くで平均年齢は28歳。できるだけ費用をかけずに世界を見て歩きたい若い世代向けのネットワークですが、単なるカウチ(宿泊)提供だけでく、現地住民との文化交流という理念があります。

利用者の拡大につれて、文化交流よりも無料宿泊所探しの参加者が増えてきているようす。登録だけなら無料ですから、そうなるのもしかたがないのでしょう。
CSの掲示板を読んでいると、昔からの参加者から最近の風潮を嘆く声も書き込まれています。
「最近のカウチリクエストはコピペばかり」
「ホストしたいと思う人はごくわずか。断ってばかりいる」
「10代から20代前半の若者に多いのだが、自分は一切ホストせず、旅先でホストされる一方というサーファーからのリクエストは、受ける気がしない」

CS参加者の中では、私は高齢の部類に入ります。いい大人が、旅先で見ず知らずの人の家に泊めてもらうというのは、やはり考えにくいものです。
そこで、CSを利用して長くて深い交流を育てていくことを考えています。

来月、フィンランドからカウチサーファーを2泊受け入れることにしました。
ヘルシンキに住んでいる女性ですが、フィンランド人ではありません。

彼女の名前はスザンヌ。カウチリクエストには、こうありました。
「あなたはフィンランドがとても好きなようですね。私はフィンランド人ではなくドイツ人ですが、ヘルシンキに7年住んでいます。この地と恋に落ちたから。だからフィンランドに住む外国人として、あなたとはシェアできることがたくさんあると思います。それから、子供の頃から空手をやっていて、今は黒帯。日本の文化にも興味があります」

この人なら会ってみたいと思わせる内容です。

東京ではカウチの需要が供給を下回っているようで、「カウチ可能性あり」のステータスにしておくと、けっこうリクエストが舞い込みます。
私はプロフィール欄の「CSで学びたいこと」には、「フィンランド文化、フィンランド語」、「行きたい国」「行く予定のある国」は「フィンランド」と書き込み、露骨にフィンランド人狙いであることがわかるようにしています。

それでも、プロフィールをろくに読まずに、コピペのリクエストを送ってくる人もいます。
「こんにちは。○月○日から○日まで東京に行きます。私にとっては初めての日本旅行! あなたはとてもよさそうな人だから、ホストしてくれませんか?」
「なぜ私のゲストになりたいか、具体的な理由を書いてください」とカウチの説明に書いてあるのに、こういうリクエストを送る人はろくに読んでいないのです。
コピペにはコピペ返し。
テンプレートに入れている「ごめんなさい、あいにくその時期は忙しいの。東京で親切なホストが見つかるといいわね。楽しい日本旅行を!」という文面を返信します。

興味のないリクエストは無視してもいいという人もいますが、「リクエスト返信率」という数値が表示されますし、サーファー側も予定があるでしょうから、断りの返信はなるべく早く出すようにします。

先日は登録したばかりの初心者でプロフィール欄がほとんど空欄のサーファーからリクエストが届きました。
エルサレムに住むカップル。50代という年齢なので、ネットに不慣れかもしれないと思い、説教メールを送りました。

「残念ながらホストできません。なぜなら私は、写真もなくプロフィールも穴だらけ、カウチフレンドもいない人は受け入れないことにしているから。CSのシステムでは、相手を知るためには、オンライン上のそうした情報がすべてだから。アドバイスさせてもらえるのなら、リクエストを送る前にプロフィールを書き込むこと。そして、日本人の中でイスラエルエルサレムに興味のある人を探してリクエストを送れば、受け入れてもらえる可能性は高くなるはずです」

この人はまじめな人らしく、「率直なアドバイスをありがとう」と、プロフィールを埋めて写真もアップして再び私に連絡してきました。エルサレムもおもしろいかもと思いましたが、今はフィンランドに集中したいし、ホストするのは一人旅の人と決めているので、会っていません。

ヘルシンキ在住のドイツ女性、スザンヌとはメールを交換するうちに、どんどん会いたくなりました。
彼女のプロフィールをチェックすると、広めのフラットに友達と暮らしているようで、多くの人をホストしています。サーファーからの評価も上々。
フィンランドに来たばかりの頃、カウリスマキの映画を観たけれど、言葉がまだわからなくて、あまりおもしろいとは思えなかった」というスザンヌに、カウリスマキ小津安二郎の関係を伝えると「日本に行く前に、ぜひ観てみます」と返信。
ヘルシンキから何か持っていきましょうか? バックパッカーだから、かさばるものや壊れものは無理だけど」と言ってくれるので、ヨレ・マルヤランタのソロCD(フィンランド語)を頼みました。

彼女のメールには、"spontaneous(自然な流れ)"という単語がよく出てきます。
最初はボランティアでヘルシンキにやってきて、「ここに住む!」と即座に決心し、両親を説得。すべてが自然な流れだったといいます。そして、これからの人生も自然な流れによって、方向付けられていくだろうと。
「あなたのspontaneousという言葉の使い方、とても素敵ですね。私はイーチン(易)を学んでいるので、そうした自然な流れにはシンクロニシティ共時性)があると思います。ユングがイーチンを西洋社会に紹介する時に用いた言葉がシンクロニシティです」
こんな具合にメールのやりとりを重ねています。

CSを始めて、英語を使うのが、けっこう楽しいことに気づいきました。
これまで何十年も英語を学んできましたが、接するのは、英語ネイティブのプロフェッショナルによる文章がほとんど。私の英語は完璧ではないという気おくれを常に感じ、「話す」「書く」は特に苦手意識がありました。
フィンランド人、スペイン人、オランダ人、デンマーク人、ノルウェー人など英語を第二言語として使っている人となら、少々文法がおかしくても、とにかく伝えたいことがあるからどんどん書いていけます。コミュニケーションの道具として英語を使いこなしている感覚をもてるようになったのです。

今年は特に海外旅行の計画は立てていないのですが、日本にいながらにして、おもしろい体験がたくさん待っているはずです。


フィンランドのシンボル、ヘルシンキ大聖堂