翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

「この道には心があるか?」

易経から2012年のアセンションを導き出したテレンス・マッケナは1946年生まれ。
マッケナより約20歳ほど年長のカルロス・カスタネダも、マッケナと同じぐらい、ぶっ飛んだ人です。
マッケナはバークレーですが、カスタネダはUCLAで人類学を学びました。

2010年末、思い立って2つの本棚のうち1つを処分し、蔵書を半分に減らしました。
手元に残すのは、再読したい本だけ。ネットで情報が得られるレファレンス類はもう不要。
動物的な勘が働いたのかも。
翌年3月の震災で、11階にある私の仕事部屋はかなり揺れたのですが、それほど大変な状況にはなりませんでした。

カルロス・カスタネダの「呪術師と私」は、少し迷ったのですが、手放せませんでした。

メキシコのヤキ・インディアンの呪術師ドン・ファンに弟子入りし、草やキノコなど幻覚性植物を使って別次元に意識を飛ばす体験記です。
単にヒッピーがラリって幻覚を見るという話ではなく、幻覚をもたらす力が強いからこそ、その力を扱うには強い生活をしなくてはならないとドン・ファンは指導します。
「準備期間をしっかりともつことに加え、人間性と知力を保つこと。さもないと、生活がこなごなに破壊されてしまう」といった教えです。

中でも危険なのが、デビルズ・ウィード。男に媚を売る女のように、罠を仕掛けてきます。
デビルズ・ウィードは別名「ダチュラ」。幻覚性のアルカロイドを含む有毒植物で、東洋では曼荼羅華とも呼ばれ、沈静麻薬としても使われます。

デビルズ・ウィードを巡ってドン・ファンと弟子のカスタネダはこんな問答をします。

ドン・ファン「デビルズ・ウィードは知者の秘密へのひとつの道でしかないんだからな。他にも道はあるんだ。だが彼女の罠っていうのは、お前に道はそれだけなんだと信じこませちまうことなのさ。わしは、たったひとつの道、それに心がなかったら特に、その道のために一生をむだに生きるのはくだらんと言ってるんだ」

カスタネダ「だけど道に心がないってことをどうやって知るんだい?」

ドン・ファン「それを歩きはじめる前に聞いてみるんだ、この道には心があるか?とな。答えがノーならお前にはそれがわかる。そしたら別の道を選ばにゃならん」

カスタネダ「でも、どうすればその道に心があるかどうかはっきりわかるんだい?」

ドン・ファン「誰にだってわかるさ。ただ問題は誰も聞いてみないことだ」

この問答があるから、私はこの本を手放せなかったのです。

1970年代のアメリカでこの本は空前のベストセラーとなり、当時の大学生の必読書でした。
その後、内容のほとんどはフィクションで、呪術師ドン・ファンは実在しないともささやかれています。

そして再び、この本が日本で注目されたのは今年の6月。
オウム真理教元信者・高橋克也容疑者が潜伏していた部屋に、カスタネダの著作があったのです。
このカラスの表紙をテレビのワイドショーで見ようとは…。

呪術師と私―ドン・ファンの教え

呪術師と私―ドン・ファンの教え

「この道に心があるか」
この問いに答えられるのは自分しかありません。
宗教家や霊能者、占い師、カウンセラー、先輩から得られるのは、あくまでも助言であり、答えではないのです。

重要な選択を迫られたとき、自分で答えを出すのが恐ろしくなってしまうことがあります。誰か権威のある人に委ねてしまえば、選択の責任を自分で取らなくてすむからです。
分かれ道にさしかかるたびに、その道には心があるかどうか、聞いてみるべきです。