ユングが易と出会ったのは1920年頃とされています。
ドイツの中国学者リヒアルト・ヴィルヘルムと出会い、1922年にはチューリッヒの心理学クラブで易について講演してもらっています。
(定方昭夫「易」心理学入門 柏樹社)
易経は、1924年にヴィルヘルムによるドイツ語訳が発行され、後にベインズ夫人によって英語に訳されました。
The I Ching: Or, Book of Changes (Bollingen Series)
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私にとっては、易経の漢文よりも英語訳のほうが頭にすっと入ってきます。
西洋人に向けた解説も大いに参考になります。
たとえば、乾為天(けんいてん)と坤為地(こんいち)。
陽爻が6つ重なった乾為天の卦は、龍で象徴されるのに対し、陰爻6つの坤為地の卦辞には牝馬が出てきます。
The horse belongs to earth just as the dragon belongs to heaven.
(馬は大地に属する。龍が天に属するかのように。)
漢文は中学と高校で習っただけでしたが、易を学ぶようになり、易経を読むようになりました。
西洋かぶれの私が、古色蒼然とした漢文を前に、途方に暮れていたのですが、易は西洋とつながるツールでもあったのだと気づきました。
学びや教育の卦である山水蒙(さんすいもう)。
九五の爻辞は、「童蒙吉」。
英訳は下の通り。
Childlike folly brings good fortune.
子どものような愚かさ(folly)が幸運をもたらす。
次の解説が続きます。
An inexperienced person who seeks instruction in a childlike and unassuming way is on the right path, for the man devoid of arrogance who subordinates himself to his teachere will certainly be helped.
未熟な人間が、子どものような素直な態度で正しい道を進みながら教えを求め、傲慢になることなく師に従えば、必ずや助けられる。
幕末明治の易聖、高島嘉右衛門が今で言えば外国為替管理法違反で投獄された際、牢名主から易経上下二巻をもらい、獄中生活で熟読したと伝えられています。
現代に生きる私は、漢文に加えて英文で易経を読むことで、退屈することはありません。
何回読んでも、これでわかったということはなく、読むたびに発見がある叡智の書物です。