翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

秘湯・小屋原温泉に導かれて

島根2泊3日の旅に行ってきました。

島根には友人の占い師、優春翠の実家があり、「一度遊びに来て」と誘われていたので、お邪魔することにしたのです。
出雲の神有月は10月ですが、11月になると空気が澄み、とてもさわやかになるそうです。
それに私は温泉が好きなので、島根の温泉を楽しむためには秋が深まったほうがいいのです。

小さい頃から体が丈夫で、母によると、とても育てやすい子どもだったそうです。
たまに風邪で熱が出て病院に連れていかれそうになると、思いきり嫌がっていました。
「注射が痛くて怖いんだろう」と、母は思っていたようですが、「放っておいたらそのうち治るのに、余計なものを体に入れたくない」と幼いなりに考えていたのです。
「西洋医学を信じない原始人」と、からかわれていましたが、病院とはほとんど無縁で成長して、大人になった今でも、病院に行くのは定期健診ぐらいです。

しかし、野生動物なみに元気な私もこの先、年を重ねれば、調子の悪いところが出てくるでしょう。
そこで思いついたのが、湯治です。
自分の体質に合った薬効の温泉を見つけておきたい。
ネットで温泉の情報を集め、よさそうなところをピックアップしています。東京在住なので、甲信越南東北あたりが中心です。
昨年は福島県裏磐梯の森川荘のワイルドな露天風呂(庭に浴槽を設置し、よしずで囲っただけ)が気に入り、今年9月には奥日光湯元温泉の温泉寺に感動しました。
湯治なので、豪華な設備や食べきれないほどの料理は不要。お湯はぬるめが好みです。

そんなふうに温泉のサイトやブログをチェックしていて、小屋原(こやばら)温泉に行き当たりました。
出雲空港から車で約2時間、三瓶山(さんべさん)の山麓にある一軒家の温泉宿、熊谷旅館。
そこには「西日本一の名湯」とも讃えられる炭酸泉が湧いているというのです。
源泉は38度と私好みのぬる湯。

家族経営のため、一日に2〜3組しか宿泊を受け付けないそうです。
何度も満室と断られるので、複数の候補日を用意して予約の電話をかけるようにアドバイスされています。
そして、アクセスがかなり困難。狭くて険しい山道を進むには、上級の運転テクニックが必要だそうです。
この温泉に行けることがあるのだろうか、この一生では無理かもしれないと、ぼんやり考えていました。

この8月から優春翠が実家の島根と関東の行ったり来たりの生活を始めて「島根にぜひ遊びに来て」と声をかけてもらったとき、まっさきに頭に浮かんだのが、この小屋原温泉です。
「島根には、行ってみたい温泉があるんだけど、かなりの秘湯でたどりつくのが大変みたいで…」
「どこ?」
「三瓶山という山にあるらしいけど、知ってる?」
ここで彼女はいきなり笑い転げました。
「なーんだ、どんなところかと思ったら。三瓶山はうちの近所。小学校の遠足でよく行った山」

「小屋原温泉には、とても行けないと思っていた」と驚く私に、彼女は「あんなに気楽に海外に行く人が何を言ってるのよ」とあきれていましたが、ヘルシンキシンガポールより小屋原温泉のほうが行きにくい感覚があるのです。
もちろん、行こうと思えば行けないことはないけれど、山道をタクシーで走り女一人で山奥の秘湯に泊まる姿が想像できませんでした。
これがフィンランドなら、フィンエアーでひとっ飛び、一人でヘルシンキに降り立つのはリアルにイメージできます。

島根では優春翠の実家に一泊させてもらい、翌日はチェックインの3時に到着するように出発。
彼女は車の運転に慣れているし、地元ということもあり、難なく小屋原温泉に到着。

山麓にぽつんと宿があるだけなので、お湯に入るしかやることはありません。
さっそく、お湯三昧です。体に泡がつくほどの濃い炭酸ガスのお湯。
大浴場はなく、内湯が4つ並んでいます。どの湯がベストか温泉マニアによって諸説あります。
もう一組の客はまだ到着していないので、順番に入っていきました。
ぬる湯なので長湯できます。一人で入っているのをいいことに、目を閉じて瞑想したり、お湯の中でヨガのポーズまがいのことをしていると、あっというまに時間がたちました。

温泉のすばらしさもさることながら、縁のある場所には結局、導かれることになるんだと実感できたのも大きな収穫でした。



お宿の外見は質素ですが、室内は最新の設備に改築され、快適でした。
浴室は温泉の成分が付着して、茶色く染まっています。