翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

アイデアとは、組み合わせ

NHKラジオ実践ビジネス英語では、毎回、番組の終わりに杉田敏先生が、Quote Unquoteのコーナーで英語の名言を紹介します。

10月17日水曜日は、第3代アメリカ合衆国大統領トーマス・ジェファーソンの名言。

Never fear the want of business. A man who qualifies himself well for his calling, never fails of employment.
(仕事がなくなるかもしれないと心配するな。自分の天職に就いた者は、職にあぶれることはない。)

callingは召命とも訳され、神の導き(call)によって就いた職業のことです。
誰しもこの世で果たすべき役割があり、その仕事をまっとうするための技能なり資格を身につければ(qualify)、一生食べていけるとジェファーソンは説いているわけですが、アシスタントのヘザー・ハワードさんが「ジェファーソンが今、生きていたら、このコメントは修正(revise)するかも」と付け加えました。

私も思わず苦笑しました。
フリーランスのライターとして、順調に収入を得ていた頃は、この言葉に強く共感していたでしょう。子どもの頃から、書くことは大好きで、それを仕事にできたのだから、自分の職業運は最高だと思っていました。

しかし、気がついてみれば、仕事をもらっていた雑誌がぽつぽつと休刊するようになり、続いている雑誌についても、耳にするのは不景気な話ばかり。同業者の廃業のうわさを聞いても驚かなくなりました。

人と置き換えることができない、自分だけのスキルがあれば生き残れるとよく聞きますが、実行するのは簡単ではありません。

なんとか私はライターとして踏み止まって食べているわけですが、自分だけの新しいスキルを創造したわけではなく、原稿書き+占いという二つのものを組み合わせたからです。

広告業界で働き始めた頃に必読書と教えられて読んだ「アイデアのつくり方」。

アイデアのつくり方

アイデアのつくり方

アメリカの広告クリエーターにバイブルと呼ばれた本です。
要点は「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何物ではない」ということ。

コピーライターとしての私のキャリアは、ぱっとしませんでした。
ウィットに富んで、はっとさせるようなキャッチフレーズを生み出す力に乏しく、競合プレゼンは大の苦手。
パンフレットなど長文を書く仕事を担当するようになり、英語が多少できることは大きな武器になりました。日本語版に加えて英語版も作りたいというクライアントもいたからです。
クリエィティブな力は凡庸で、英語力にしても、帰国子女や留学経験者の足元にも及びません。
でも、そこそこ原稿が書けて、英語に訳す力があれば、あとはネイティブに手直ししてもらえば、クライアントの要望を反映した英文の制作物ができあがります。元の日本語を書いた人間が下訳して、説明もするのですから。

その後、90年代初めに出版業界に転じました。景気は後退しつつありましたが、仕事はけっこうありました。
でも、編集者の発注を待っているだけでは、景気に関係なくそのうち行き詰るは明らかでした。
ほとんどの編集者は会社員だから、毎年、新入社員が入ってきます。年上のライターよりも、同世代か年下に発注して気楽にあれこれ指示を出したいのは当然でしょう。

コピーライター時代に武器となった英語のような、組み合わせるものは何か。
そう考えて、本格的に東洋占術を学び始めました。

これで何とか今のところは生き延びているわけです。
通常の占い企画なら、占い師とライターを用意しなくてはいけないのに、私だったら一人で済むので重宝されています。
たまにティーン雑誌に占い原稿を書くこともあります。編集者には「表現が古いところもあるでしょうから、今の若者に合うように直していただいて構いません」と伝えます。
撮影現場で10代の読者モデルと会うと、親世代にあたるため、最初は身構えられるのですが、占い師のおばさんだと思ってもらえれば、スムーズに話が広がります。

ただし、組み合わせればいいといっても、興味のないものを「これなら儲かるから」という動機で選ぶのは、あまりうまくいかないと思います。

好きなもの、得意なものが一つだけでは趣味で終わる可能性が強いでしょう。
二つ組み合わせれば、ビジネスチャンスにつながります。
好きという度合いが強ければ、それはcallingかもしれません。