翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

フィンランド語は魔法の言葉

中野・スオミ教会のフィンランド語入門講座、2カ月目の10月を迎えました。

「この猫は小さいけれど、あの猫は大きい」
「あれはどんな猫ですか?」「白い猫です」
猫を使って基礎的な構文を練習しながら、とても不思議な気持ちになりました。
というのも、私がフィンランドという国を意識したきっかけは、「フィンランド語は猫の言葉」という一冊の本だったのです。

フィンランド語は猫の言葉

フィンランド語は猫の言葉

フリーのライターになる前、広告制作会社にコピーライターとして勤めていた私は、とある自動車のタイアップ広告の原稿を担当しました。各方面の文化人が登場し、車を運転してもらうという記事風広告シリーズです。
そのうちの一人が、フィンランド語翻訳家の稲垣美晴さんでした。

取材前の下準備として稲垣さんの著書「フィンランド語は猫の言葉」を読みました。
本に書かれていた景色の描写や、フィンランド人の国民性に心ひかれ、「いつか旅してみたい」と思ったものです。
著書から意志の強い知的な女性をイメージしていたのですが、実際にお会いした稲垣さんは、あたりのやわらかい小柄な女性。取材はスムーズに進行しました。
シリーズ広告だったので、他にも文化人を取材したはずなのですが、覚えているのは稲垣さんだけです。

その後、アキ・カウリスマキ映画を見たのも、このときの記憶が影響していたのかもしれません。

稲垣美晴さんの本で薪が準備され、
カウリスマキ映画で着火され、
レニングラードカウボーイズのヨレ・マルヤランタで燃料投下。
フィンランド語を専門にするなんて、奇特な」と思っていた私が、20数年後にフィンランド語を学び始めるとは。
世の中には不思議な巡り合わせがあるものです。

占い学校に通い始めたとき、ファンタジー好きの友人に「ハリー・ポッターみたい」と言われました。ホグワーツ魔法魔術学校では占いの授業もありましたね。
西洋かぶれだった私が東洋占術を選んだため、最初は用語を覚えるのに苦労しました。
行き帰りの電車で「けんだりしんそんかんごんこん」「こうおつへいていぼきこうしんじんき」など、呪文のように繰り返したものです。
易の八卦、乾兌離震巽坎艮坤に、四柱推命の十干、甲乙丙丁戊己庚辛壬癸です。

これらの言葉は、新しい世界への扉を開いてくれる魔法の言葉でした。
ライターだった私を占い師に変えたのですから。
占いのお客さんの誕生日を聞いて命式を立てれば、風景画が浮かび上がってきますし、迷っていることがあると聞けば、筮竹を手に取り、天からの答えを伝えます。

そして、今の私にとってフィンランド語は新しい魔法の言葉です。
「タマ・キッサ・オン・ピエニ(この猫は小さい)」という響きからして、呪文のように聞こえます。

若き日のアキ・カウリスマキ小津安二郎の映画を見て、文学へのあこがれを捨て、映画の道に進むことを決意したのを「赤いヤカンを探すことにした」と表現しています(赤いヤカンは小津のカラー第一作「彼岸花」に出てくる重要アイテム)。

私は、フィンランドで小さな猫を探すことにします。

カウリスマキ、小津を語る」


ヘルシンキで見つけた猫。残念ながら、本物の小さな猫にはまだ出会っていません。