レニングラード・カウボーイズの「トータル・バラライカ・ショー」のDVDが欲しいのですが、アキ・カウリスマキ監督の作品のDVDはボックス販売しかありません。
熱心なファンはいるけれど、それほど広範に知られているわけではないという微妙な存在のためか、DVDボックスは廃番。アマゾンのマーケットプレースを覗くと、ヘルシンキ往復航空券が買えるほどのお値段。いくらなんでもそこまでは出せません。
幸いにして、自宅から徒歩5分のレンタルショップにトータル・バラライカ・ショーのVHSが置いてあり、私以外に借りる人はめったにいないようです。旧作ですから1週間100円。VHSを断捨離しなくてよかった…。
レンタルショップは収納スペース、レンタル料を保管手数料と考えて、観たくなったらそのつど借りています。
「ハッピー・トゥギャザー」もいいのですが、「スイート・ホーム・アラバマ」も聴かせます。
レイナード・スキナードの1974年のヒット曲。プロデューサーはアル・クーパー。ボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」のイントロのオルガンを即興で弾いた才人です。
しかし、この歴史的コンサートに「スイート・ホーム・アラバマ」は、PC(ポリティカル・コレストネス/政治的正しさ)という視点からはどうなんでしょうか?
この曲は、南部の人種差別を批判する人権派ニール・ヤングの「サザン・マン」に対して「カナダの人間に言われたくないね」と返した曲です。
歌詞の中にも「覚えてろよ、ニール・ヤング。南部じゃお前なんかお呼びじゃない」、「バーミンガムでは、知事は愛されている(公民権運動を弾圧した悪名高いウォーレス知事のこと)」といった刺激的なフレーズが出てきます。
実際のところは、レイナード・スキナードとニール・ヤングは音楽業界で交流があったし、「知事を愛している」と歌った後に、自らブーイングを入れてみたり、それほど深刻な対立ではなかったという説もあります。そもそも彼らはアラバマではなくフロリダ出身です。
1977年10月にツアー中の飛行機が墜落し、レイナード・スキナードの主要メンバーが死亡。ニール・ヤングはかなり寝覚めが悪かったのではないでしょうか。
こうした違和感を昇華してくれるのが、レッドアーミー・アンサンブルのバックコーラスです。日本人におなじみのエイコーラ、エイコーラの「ボルガの舟歌」をレニングラード・カウボーイズのヨレ・マルヤランタが歌う「スイート・ホーム・アラバマ」にかぶせてきます。
夏のアラバマ。けだるい暑さのピーナツ農園。
冬のロシア。凍てつく大地を流れるボルガ河。
アメリカ南部の黒人差別、ロシアとソビエトがフィンランドに与えた脅威。
そうした歴史のいきさつが雄大な流れに巻き込まれていくかのようです。
四柱推命の古典「窮通宝鑑」では、美しい命式を説くにあたり、周易の「水火既済(すいかきせい)」が使われています。水と火は正反対の性質だから、うまくバランスを取れているかどうかが看命の基本です。
トータル・バラライカ・ショーの「スイート・ホーム・アラバマ」も火のアラバマと水のボルガが見事に調和した、本当に美しいパフォーマンスです。
ヘルシンキのレストラン、ツェトル。レニングラード・カウボーイズのサッケ・ヤルヴェンパーがデザインしています。
※追記
その後、カウリスマキボックスはブルーレイで再発売となりました。