翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

「心をみがけば、奇跡はおこる」映画「ル・アーブルの靴みがき」

映画「ル・アーブルの靴みがき」を観ました。

一番好きな映画監督は、フィンランドアキ・カウリスマキ監督。
パリやローマを舞台にしたお洒落なヨーロッパではなく、どことなく野暮ったくてなつかしさを感じさせる街並み。寡黙で温かい登場人物。1996年の映画「浮き雲」を観て以来、不思議な魅力に夢中になりました。

カウリスマキ監督は小津安二郎の「東京物語」を観て、それまで志していた文学を捨て、映画の道を選んだそうですが、大げさな演技はなく、淡々とした台詞のやりとりは小津作品に通じるものがあります。

「ル・アーブルの靴みがき」は、大人のおとぎ話です。
冷静に考えたら「そんなこと、あるわけないだろ」と突っ込みたくなるストーリーなのですが、映画が終わった後も、何度も思い返したくなる味わいがあります。
カウリスマキ監督の作品は、「美男美女が出てこない映画」とも評されますが、人目を引く大スターが出演していなくても、なんとも不思議で心温まる世界が描けます。

映画の中で印象に残った言葉。
「稼ぎのいい仕事はいろいろあるが、羊飼いと靴みがきが一番人々に近い。われわれが一番山上の垂訓に従って生きている」
羊飼いはイエス・キリストにたとえられることが多いからわかりますが、靴みがきはなぜ?
稼ぎが少ないから、山上の垂訓の「幸いなるかな、貧しき者」にあてはまるからでしょうか?

私は最後の晩餐の前に、イエスが弟子の足を洗うシーンを思い浮かべました。
足を洗うのと靴をみがくのは似たような姿勢になります。人の足を洗うという行為は最も身分の低い者がやる仕事の一つですが、あえてキリストが弟子の足を洗うことで、心からの愛情を示したとされます。キリスト教系の洗足学園の校名の由来にもなっています。
貧しい靴みがきであっても、密航者であるアフリカの少年を救うために奔走する主人公マルセルの姿に、崇高な愛を感じました。

映画のキャッチフレーズは「心をみがけば、奇跡はおこる」。
平凡な人生にも、奇跡は日々、おこっています。


ヘルシンキにある、カウリスマキ監督経営のバー「カフェ・モスクワ」。壁には今は亡きマッティ・ペロンパーの写真が。