翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)。副業で外国人に日本語を教えています。フィンランドが大好き。

パメラ・コールマン・スミスの哀しい死

先週の日曜日、吉祥寺のカイロンで伊泉龍一先生のウェイト版講座がありました。

「タロットでは、ウェイト版が入門者用と思われているけれど、決してそんなことはない」という話から講座はスタートしました。
そして「この講座を受けて、ウェイト版は複雑だからもういいやという人と、もっと学びたいという人に二分される」とも。

便宜的にウェイト版と呼ばれますが、正確にはウェイト・スミス版と呼ぶべきだと伊泉先生は強調します。
アーサー・E・ウェイトは絵のディレクションをしただけで、実際に描いたのはパメラ・コールマン・スミスだから。

パメラ・コールマン・スミスは、1878年生まれ。父親はアメリカ人の商人で、イギリス、アメリカ、ジャマイカを行ったり来たりしていました。
劇団に入団してイギリス各地を巡業した後、ニューヨークのブルックリンで美術を学びました。そしてイギリスに戻り、イラストレーターとして働き始めます。100年ほど前の女性としては、かなり自由な生き方です。
ウェイト・スミス版のどことなく軽快で親しみやすいイメージは、彼女のこうした生き方が反映されたものかもしれません。

伊泉先生の講座は、ウェイト・スミス版誕生の背景を説明するために、ゲーム用カードだった初めて占いに用いたフランスのエテイヤまでさかのぼり、クール・ド・ジュブラン、エリファス・レヴィ、そしてウェイトが所属していた「黄金の夜明け団」へと展開されていきました。

タロットを占いに使うというエテイヤの発想、ヘブライ文字の22文字を大アルカナ22枚に対応させたレヴィ。そして、神秘主義の思想を持ち込んだウェイト。
これらの天啓とも呼ぶべきものが重なって、タロットは次々と進化を遂げてきました。

東洋占術を主に学んでいる私ですが、タロットには心引かれるものがありました。
勘がよくてそこそこボキャブラリーが豊富な人なら、入門書を読んでカードの意味を覚えれば、すぐに占えるようになりますが、本格的に学び始めると実に奥が深い不思議な占術です。

伊泉先生のタロットの1年間のコースで学んだのは、マルセイユ版だったのですが、鑑定の場ではウェイト版を使っています。ウェイト版の絵に魅了されたからです。

2009年、ウェイト・スミスパック誕生100周年を記念して、復刻版が制作されました。当時の色彩を再現したタロットカードに加え、パメラの他の作品もセットになっています。そして、伊泉先生の講座で取り上げられたオカルトと神秘主義の知識がないと読み解けないウェイトの解説書THE PICTORIAL KEY TO THE TAROTも。

これほど普及しているウェイト版なのに、パメラ・コールマン・スミスは経済的に困窮した状態で亡くなりました。
「印税契約にしていれば」と伊泉先生はおっしゃっていましたが、これからウェイト版を使うたびにパメラを思い、敬意を表したいと思います。世界中で数多くのタロティストたちに愛用されていることを知れば、彼岸のかなたにいるパメラも、喜ぶのではないでしょうか。