仕事には大きく分けて、肉体労働と頭脳労働があるとされてきました。
現代社会では、これら二つに加えて、「感情労働」が増えています。
感情労働とは、人を相手に気を使う仕事です。物やサービスを提供する仕事全般は感情労働といえますが、一昔前までは、感情エネルギーをそれほど消耗することはありませんでした。
効率化が優先され、社会が殺伐としてくると、感情労働はかなりハードな仕事になります。
自分に逆らえない立場の人間に向かって、憂さ晴らしをしようとするクレーマーやモンスターペイシェントも出現します。
その結果、クレーム処理担当の電話オペレーターを始め、販売員、駅員、教師、医師など、職場で精神を病む人が続出しています。
航空業界の接客担当も感情労働です。
もはや飛行機に乗ることは特別な行動でなくなったはずなのに、過去のイメージを引きずっているのか、キャビンアテンダントや地上職員に、丁寧なお客様扱いを期待する客が多く、現場の消耗はかなりのものでしょう。
私は、実家帰省にはJALの介護帰省パスを利用します。
空港のJALカウンターでは、ファーストクラスとグローバル会員担当の女性職員はブラウスにスカーフという昔ながらの制服なのに、一般客向けカウンターはポロシャツなのに気づきました。「丁寧なサービスよりも、さくさく合理的に処理していきます」という決意表明なのでしょう。
先日、伊丹空港から搭乗した際に、介護帰省パスのシステム変更がありました。
これまでは、紙のカードが発行されていたのですが、JALカードに情報をまとめて入れることになり、カウンターで発券してもらわなくても済むようになりました。
便利ですが、気になるのは、介護帰省パスの有効期限の確認です。パスの延長には親の介護保険証のコピーと身分証明書が必要なのですが、有効期限が1年なので、うっかりしているとすぐに切れてしまいます。
紙のカードには有効期限が明記されていたけれど、今後はネット上で確認できるのかどうか職員に質問したところ、わざわざカウンター奥まで確認に行き、あれこれ説明してくれました。時間のゆとりがあったし、とても好感の持てる対応だったので、がんばって仕事をしていると感心しました。
説明が終わり、チェックインしてラウンジでビールを飲んでいると、先ほどのカウンター職員が、私を探しに来ました。声をかけられてびっくりしていると
「先ほどの説明に不備があったので、訂正のために参りました」と言います。
介護帰省パスなんて、JALの親切心でやっていることだろうし、こんな面倒で利益率の低いシステムは廃止してしまいたいのが会社の本音ではないでしょうか。
それでも、わざわざラウンジまで顧客を探しに来て、訂正の説明をしてくれた職員。いろいろ大変でしょうけど、がんばってくださいと心からエールを送りました。