翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

いつでもやめられるグループに入ろう

日大アメフト事件は日本社会のゆがみを象徴しているからこそ、延々と報道されているのでしょう。

 

「自分にはこの組織しかない」と思い詰めると、上からの理不尽な欲求にも従ってしまう。

とても不健康な状況です。

アメリカの部活動はその点、ぐっと自由でシーズンごとに複数の部活動に参加できるそうです。

 

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フィンランドでは、学校とスポーツ活動は完全に切り離されています。

学校で居場所がなくても、地域のスポーツクラブで活躍できれば、楽しく暮らせるでしょう。

 

私は日本的な組織に属するのが苦手で、学校が大嫌いでした。

働かなくてはいけないと刷り込まれていたので、就職をしましたが、本当に嫌でした。

フリーランスとして働き始めて、ストレスから解放されました。

 

そして、日本語学校で教え始めて、失敗続きで胃が痛くなる日々を過ごしましたが、何とかやり過ごしたのは、本業じゃないし、いつでも辞められるから。それにいくら日本語教師としての評価が低くても、私のすべてが否定されるわけではないという開き直りもありました。

 

日本語学校は学生も教師も出入りが激しく、次々と去っていきます。そんな職場だから組織からの圧力を感じることはありませんでした。

 

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新卒一括採用、定年まで勤め上げるという日本社会のシステムは経済成長の時代ならうまくいったでしょうが、今はそんな時代ではありません。

 

仕事だけでなくお付き合いでも気楽に付き合い始めて、合わないとわかったら距離を置けるような関係にしたいものです。

 

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釜山の海洋博物館。タツノオトシゴが地球を支えています。日本地図は北から南までつながっていて、かなりいい加減ですが、それが海外から見た日本なんでしょう。小さいことに目くじらを立てずに、大らかに受けいれたいものです。

旅のささやかな思い出

忙しい毎日はいやだと思いつつ、欲の強さのために走り回っている日々。

 

息抜きになるのは旅です。

旅に行く前は、どんなところなのかあれこれ想像を巡らし、帰ってきたら思い出を反芻。

旅先ではお土産を買いません。家の中は物があふれて、なるべく買い物をしないようにしているので、思い出だけが残る旅はとてもいいお金の使い方です。

 

「お土産を買わない旅」を教えてくれたマイケルと会ったのはちょうど4年前でした。

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ショッピングの時間を取らなくて済むので、観光の時間が長く取れますが、有名なスポットを見て歩くよりも、地元の人の日常を垣間見たり、思い入れのあるものに触れるほうが強い印象が残ります。

 

 たとえば、ベトナムハロン湾のホテルで出されたウェルカムドリンク。

しょうがの味が効いて、長旅の疲れが一気に取れました。チェックイン後、ホテルのバーのハッピーアワーに繰り出すと、バーマンがせっせとウェルカムドリンクを作っていました。チェックイン客がどんどん押し寄せているのです。

 

「それ、さっき飲んだけどすごくおいしかった」と声をかけると、「もっと飲む?」とおかわりをくれました。

二杯目もしみじみおいしい。どんなお茶の葉を使っているのか聞いたら、彼が取り出したのは何の変哲もないリプトンのティーバッグ。

 

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紅茶は普通だけど、一晩かけて煮出したしょうがのシロップを入れるとのこと。

翌日、出向いた 野菜市場には葉付きのしょうががずらりと並んでいました。私が普段使っているチューブのしょうがでは、あの味は出せないでしょう。

 

風光明媚なハロン湾で珍しい光景も目にしたはずなのに、ハロン湾で真っ先に思い出すのはウェルカムドリンクです。

 

釜山でも忘れがたいのは、海を見渡す竜宮寺で飲んだゆずのお茶。瓶入りのゆず茶を水で溶かして氷を入れただけなんですが、坂道を登って疲れた体に染みわたるようでした。

 

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しょうがとゆずのお茶、どちらも作ろうと思えば作れますが、旅先の味は再現できそうにありません。実際に作ってがっかりするよりも、思い出だけにとどめておいたほうがいいでしょう。

 

さて、次の旅ではどんな思い出ができるでしょうか。

ロウソクの火を灯し続ける

世間が騒ぎ続けている日大アメフト問題。

関西学院大学の会見でこんな言葉を聞きました。

 

発言者は小野ディレクター。

闘志は外から言われて大きくなるものではなく、心の中から内発的に出てくるものであり、選手の成長を育てるもの。

そして、その一番根源にあるのは「フットボールがおもしろい、楽しい」と思える気持ち。

 

そして、小野ディレクターはそうした気持ちを「ロウソクの火」にたとえます。

 

我々がコーチとして一番大事なのは、選手の中に芽生える楽しいという気持ち、これは『ロウソクの火』みたいなもので、吹きすぎると消えてしまいますし、大事に、少しずつ大きくしないといけない。そっと火を大きくするような言葉も大事でしょう。内発的に出てくるものをどう育てるかが、コーチにとって一番難しい仕事だという風に思っています。

 人の心はとてもデリケートです。ちょっとしたきっかけでころころ変わります。

それを「ロウソクの火」にたとえた小野ディレクターの表現力。

 

アメリカを代表する名コラムニストを誕生させたのは、高校の作文の教師の一言でした。ロウソクの火は大いに燃えあがったのです。

 

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私が日本語を教えている外国人学生たち。

日本のまんがやアニメに心を奪われ、ロウソクの火が灯りました。

そしてあこがれの日本に留学したものの、日本語のむずかしさに音を上げます。そのうち学校をサボりがちになり、秋葉原に入りびたる学生も。

日本語を学ぶ外国人学生たちのロウソクの火を消さないためにはどうしたらいいのか。

 

「がんばれ、とにかく覚えろ」の一本やりではロウソクの火を吹き消してしまいます。

習ったはずの単語や文法を忘れるのも自然なこと。それを責めるのではなく、学生が持っているすべての力で書いた作文を精一杯受け止めるのが教師の務めです。

 

「自分の日本語が日本人に受け止められた」という肯定感が「日本語を学びたい」というロウソクの火を灯し続けますように。

 

そして私自身も、気を付けていないとロウソクの火は消えてしまいます。

日本語教師になりたての頃は、少しでもいい授業をしたかったはずなのに、いつしか割り当てられたコマ数をこなすだけになることも。

ロウソクの火が消えないように、折に触れて心の中を整理したいものです。

 

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「堂々と勝ち、堂々と負けよ」という詩の一節も披露されました。

ドイツの哲学者カール・ダイムの詩で、関西学院のアメフト部では、試合の前に朗読するそうです。

 

堂々と勝つことより、堂々と負けることのほうがむずかしい。

50代を超えると、人生はすべて負け戦。過去にできたことができなくなることの連続です。そうした現実を受け入れて堂々と負けたいものです。

 

いつも機嫌よくありたい

日本語学校で教え始めて3年目。あれこれ参考書を買いあさりましたが、最も参考になったのがこの本です。

 

教授法や教材について書かれてあるのですが、最も心に残ったのが以下の内容。

国際交流基金で日本研究部長などを歴任した上田孝さんによると、良い日本語の先生であるための条件は「機嫌がよいこと」。

 

なるほど。教え方のテクニック以前に、教師は上機嫌で学生に接しなくてはいけない。

中学や高校で、機嫌の悪い教師にびくびくしながら授業を受けたことがあるのですが、今はそんな時代じゃありません。

しかも外国人学生は権利意識が強く、授業がいやだと感じたらさっさと登録を取り消します。

 

3年前に教え始めた頃の学生には、謝りたいことだらけです。

慣れていないので内心びくびくしながら、胃が痛くなることばかり。機嫌がよい教師とは程遠い状態でした。学生も楽しくなかったでしょう。

今は少し慣れて、学生たちの日本語を受け止めて、おもしろいと思えるようになりました。そんな私の楽しい気持ちが学生に伝わって、教室がなごやかなムードになっていくのが理想の展開です。

 

教師なのに学生の質問に答えられなかったり、漢字をまちがえたり。

教室で数えきれないほどの失敗をしてきましたが、学生たちは「なんだ、日本人だって日本語が完璧じゃないんだ」と肩の力を抜いてくれればいいのですけど。

だめな教師の言い訳ですが、少なくとも私の教室では、みんな機嫌よく過ごしてほしいと願っています。非漢字圏に生まれて、日本語を学ぼうと思い立っただけで、私は「本当にすごいね」という念を送っています。

 

「死者の日」を教えてくれたメキシコの学生は「死」さえも笑い飛ばします。

南米からの学生はいつも大歓迎。まぬけな失敗をしても、笑っていられるうちは大丈夫なんだという気になります。

 

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釜山の日本風居酒屋。がんばって日本語のメニューを掲げているのですが、細かく見ると変な表記。だけど、それもご愛敬で楽しくなります。 

  

そして、教室だけではなく、人生全般も機嫌よく過ごしたいものです。

 

長く生きていると、思い通りにならないことばかり多くなりますが、不都合や不自由も「そんなものか」と受け入れたいものです。何かを成し遂げられなくても、一日を機嫌よく過ごせたらそれだけで上出来です。

人間は多面体

私が教えている日本語学校は、短期留学の学生が多いので、夏の到来とともに学生数が急増します。

夏休み期間、あこがれの国の日本で学ぼうとやって来るオタク・スチューデントたち。

毎週月曜日、新しい学生が入ってきて、金曜日には誰かが卒業していきます。

 

そんな中、ひときわ強い印象を残したのが昨年の今頃教えていたベルギー人の女の子です。日本語の上級者で「このクラスが一番好き」と熱心に作文に取り組んでいました。ある日、取り乱したようすで教室にやって来ました。ホストファミリーとのトラブルです。旅行で不在になるにも関わらず、鍵を渡して私の家に泊めました。

 

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この話には後日談があります。

 

秋にやって来た台湾人の女子学生。

とても親切なホストファミリーに滞在しているらしく、「あんなこともしてもらった、こんなこともしてもらった」と本当にうれしそう。

 

どんな家に割り振られるかで学生の日本での生活は大きく差が出るものだと思いました。

しかしその後、アコモデーション担当者と話していると、なんと、二人のホストファミリーは同じだということが判明したのです。

 

『月見座頭』という狂言があります。この本で読みました。

生きるチカラ (集英社新書)

生きるチカラ (集英社新書)

 

 

 「この世に『いい人』と『悪い人』がいるわけではない」というタイトルの章。

中秋の名月の夜、一人の座頭はある男と打ち解け、男が持って来た酒を飲み、すばらしい夜を過ごします。ところが帰る途中に荒っぽい男に突き倒されてます。

「この世にはすばらしく親切な人もいれば、とんでもない暴漢もいる」と盲目の座頭は嘆きますが、観客には前者と後者は同一人物であるとわかります。

 

「人間はちょっとしたことでまったく異なる自分が表に出てくる」「われわれは常に同じ自分でいることはできない」と著書の植島先生。

 

人間の性格は固定されているのではなく、関係の中で生じる。

AさんにとってBさんはとてもいい人でも、Cさんにとっては最低な人かもしれません。だったら、人間関係を選ぶことで、性格も変えられるかも。

自分の性格が悪いと自己嫌悪に陥るのだったら、付き合う人を選ぶべきです。

 

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那覇識名園。丸と四角を重ねたデザイン。

 

「いきるチカラ」からは多くのことを学びました。

「運は常に回さなくてはいけない」という教え。そのためには旅が有効です。

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そして、一人の人間がたくさんの顔を持つべきという教え。

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状況の変化に従って自分も変わる。自分が決めたことにこだわってはいけないという教え。

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